2010年9月19日

日米関係と日中関係を考え直すのに欧州を参考にする

Saint-Malo, France
議論後に議論前の結論に至ることにも価値がある このエントリーを含むはてなブックマーク」と「普天間基地問題における三つの勘違い このエントリーを含むはてなブックマーク」を書いていた5月は、普天間基地問題で盛り上がっていました。対米従属を改める可能性について言及したところ、コメント、はてブ、Twitter、BLOGOSなどでかなり感情的なコメントを頂きました。あれから4ヶ月経ち、首相が変わり、落ち着いたと思いますので、このエントリでは普天間基地問題を振り返りたいと思います。

なぜ、普天間基地問題を振り返ろうかと思ったかというと、2010年9月13日にダイヤモンド・オンラインで公開された「「民主党政権は臆せず普天間日米交渉のやり直しを求めよ!」 ヴォーゲル・ジュニアが語る “ジャパン・アズ・ナンバースリー”時代の安全保障論 ~スティーヴン・ヴォーゲル カリフォルニア大学教授インタビュー「民主党政権は臆せず普天間日米交渉の やり直しを求めよ!」 ヴォーゲル・ジュニアが語る “ジャパン・アズ・ナンバースリー”時代の安全保障論 ~スティーヴン・ヴォーゲル カリフォ」で、近い主張を見つけたからです。専門外の学生が書くよりも、専門家の教授が言う方が説得力があると思うので、これを紹介しながら振り返ります。

アメリカは日本のことなんて構わない/基地は縮小しても構わない

日本のニュースでは、普天間基地を移設する提案をすることで、日米同盟が危機に陥るみたいな論調だったのかもしれませんが、かなり違和感をもちました。日米同盟が破綻するような事態になれば、アメリカはもちろん欧州の国々も西側の一員として相当な衝撃が走るはずです。フランスでは日常のように、ニュースではたまにジャポンと聞こえるぐらいでした。実際は、アメリカも欧州も大して関心を持たず、本ブログには「米軍基地がどこになろうと世界情勢にとっては、ぶっちゃけ大した問題ではないのです。そして当事者のアメリカ自身も無関心でしょう」と書きました。

この教授も、アメリカは大して関心を持っていなかったとの意見です。
質問)普天間問題の迷走などで民主党政権に対する不信感が米国側に広がり、日米関係が危うい状態にあるとの指摘もあるが。

何と比較するかによって答えは違ってくると思うが、私は日米関係が揺れているとか、大変な時期にあるとかそういうことでないと思う。また、米国側が不信感をもっているというのは言い過ぎだろう。
さらに、基地が移動することで日本が侵略されるような勢いでコメントしてくる人もいましたが、専門家の教授によれば、軍事的・戦略的にも問題ないということです。
質問)日米協力は日本の安全保障の要だが、普天間基地移設や在日米軍基地を巡る最近の問題をどうみるか。

私はこれだけの規模の在日米軍基地は必要ないと思っている。すぐに大幅縮小したらアジアの安全保障に悪影響を与えかねないが、少しずつ縮小していけば何の問題もないだろう。

米国基地の本当の意味は何かと言えばそこに基地があることが一番重要なのであり、それが北朝鮮へのメッセージにもなる。海兵隊の普天間基地が本当に必要なのかといえば、私は海兵隊が沖縄からいなくなっても軍事的・戦略的に問題ないと思う。

米軍再編の本丸はイラク/アメリカも日本なんて構ってられない

アメリカも本当は、在日米軍を縮小したいのです。それがなぜ言えないかという理由が書かれています。
質問)オバマ大統領はなぜ「在日米軍を縮小する」と言えないのか。

大統領が「在日米軍の規模を半分に縮小しよう」と言った場合、どこをどう切るかが問題となる。海兵隊を切ろうとすれば、当然海兵隊のトップが反発するだろうし、陸・海・空軍との関係も悪化する可能性がある。イラク、アフガニスタンの戦争を抱えるオバマ大統領としてはいま米軍内の問題を起こしたくないので、「普天間基地移設問題は従来の合意案に従ってほしい」と日本側に迫っているのだろう。
普天間基地問題のときに、米軍基地を縮小するのはアメリカにとっても魅力的な提案でした。アメリカは超大国とはいえ、今世紀には相対的な衰退は避けられません。力の充実している今のうちに余計な負荷を減らして、将来に備えたいのです。アメリカの抱える主な余計な負荷は、イラク、アフガニスタンの米軍です。これを再編するのが死活的に重要なのです。それに比べれば在日米軍の問題は些細な問題です。

オバマ大統領とすれば、イラクとアフガニスタンから撤退した上に、さらに日本からも撤退すれば、弱腰として非難を受けることになるため、それは避けたいはずです。日本としても在日米軍の縮小という日本の政治的成功が、オバマ大統領を苦しめる結果になってしまっては本末転倒です。そんな理由で普天間基地問題は手付かずのまま放置されたのかもしれません。

(この教授もアメリカ国内では、弱腰、理想主義者と批判されているんでしょう。「せっかく従順な子分の基地を縮小するなんて」と。世界に軍隊を送って力を誇示することがアメリカの繁栄につながるという従来路線派が、結局は米国の体力を余計に消耗させ、 パクス・アメリカーナの寿命を縮めることになるのでしょうか。)

日中関係の進展が重要

普天間基地問題において、対米従属を改める可能性と絡めて、日中関係を議論することはしませんでした。対米従属を改める議論をした後、日中関係を議論すると、従来路線派の妄想の中の媚中の姿と重なりすぎるため、自重しました。

以下の引用では、中国対策へも言及されています。
質問)それでは日本の安全保障を強化するにはどうすればよいのか。

日米協力の他、アジア地域の国際機関などを通して新しい協力体制づくりを働きかけることだ。たとえばASEAN地域フォーラム(ARF)などをうまく利用していけば、すぐにNATOのような安全保障体制にはならなくても、長期的にはアジアの協力体制につながるのではないか。中国の台頭が目に見えており、10年~20年後には中国の時代になるのは明らかだ。そうなるのを待たずに早く中国を多国間のフレームワークに巻き込むことが大切だ。そうすれば中国が強くなっても、日本は困らないで済む。
このあたりはバカ、ルーピーと一顧だにせず打棄てられた鳩山氏の「東アジア共同体」構想に似ています。

まとめ

対米従属を抜けて、地域の安定と調和に尽力する方向性を、正解と断定するわけではありませんが、一刀のもとに葬り去るほど程馬鹿げ考えでもありません。

アジア地域と安定と調和がどれぐらい、日本の幸福と繁栄をもたらすものなのかは、アメリカを参考にすることはできないでしょう。むしろ欧州地域における安定と調和が、EUの構成国にどれぐらいの利益をもたらしているか見るのがいいのではないでしょうか。欧州に一度でも来たことがある人は、良い事も悪い事も含め、自分の目でみえた欧州の風景を理解して日本に伝えるようになればいいなと思います。

8 comments:

匿名 さんのコメント...

最近、中国は日本との閣僚レベルの交流を打ち切りました。それ以前から日本の領海なんか知ったことかという態度を続けていました。ヘリが日本の船の近くまで来て示威行為をしたりやりたい放題です。

そのうち尖閣諸島だけじゃなくて沖縄まで本気で領有権を主張するかも知れませんね。チベットとかウイグルがそうであったように、中国は嫌がる住民を顧みることなく制圧しますから。

この辺が解っていなかった鳩山はやはりルーピーと言われても仕方がないと思います。頭の中にお花畑が咲いていたのでしょう。

友達づきあいも結構だけど、友達は選んだ方がよいです。中国は子分にはしてくれるかも知れませんが、決して友達にはならないでしょう。

匿名 さんのコメント...

欧州はロシアをEUに入れるような動きでもあるんですか?

Someone さんのコメント...

>10年~20年後には中国の時代になるのは明らかだ。そうなるのを待たずに早
>く中国を多国間のフレームワークに巻き込むことが大切だ。

確かに順当に行くとそうなんですけど、中国は高齢化問題、政治腐敗、国内経済格差、少数民族との不和と短期での明確な解決策が無い問題が山積みなんですよ。
特に最近は人民解放軍の国内での勢力が強くなってきているなどという不穏な噂もあり、先が見えないんですよね・・・。
多分中国政府自身も明日の我が身が解らず頭を悩ませているはずです。


沖縄の基地問題については、一度戦争になってしまえば日本は終わりなので、米軍基地が沖縄に有ろうがなかろうが意味はありません。
ただ、日本側としてはある程度の数のアメリカ兵を沖縄に人質に取っていないと、有事に見捨てられるんじゃないかと不安なんです。
沖縄にアメリカの軍隊がいればなし崩しにアメリカを防衛戦に巻き込めますが、居ないと見て見ぬ振りをされるんじゃないかというのがある。
アメリカはアメリカ本土を攻撃可能な敵と交戦したことが有りません。核を使用しないちょっとした小競り合いでも、ある程度の規模の物(兵員死傷者1万人程度の)が発生したら、顔を青くして逃げるんじゃないかと思っている人は少なくないでしょう。
(両者全面核戦争に踏み切れないまま、通常兵器での衝突を繰り返す消耗戦が発生するとは普通思えませんが、人間は不思議な生物ですから・・・。)

少なくても私は、沖縄からの米軍の撤退は実質的には日米安全保障条約の無効化を意味していると思っています。(現在でも本当にアメリカが極東地域で大規模な紛争を処理出来るとは思っていませんが。)

でも、沖縄にだけ負担を押し付けるのは不公平ですよね・・・。

匿名 さんのコメント...

最近の中国の周辺国に対する威圧行動を見る限りは共同体は不可能でしょう。

それに辺野古移設がご破算になったら
おそらく日本は自主防衛にもっと走って
強力な巡航ミサイルを搭載した原子力潜水艦を作るかまたは購入するんでしょう。

そうなると一気に憲法改正(9条を無くすのみ)に踏み切る可能性も高いですね。

匿名 さんのコメント...

9月20日の投稿だというのに、何故領土問題に全く触れていないのかが理解できません。
これに言及せずに、都合の良いばかり発言されても周囲からの理解は得られないと思います。

特に尖閣諸島に関しては、タイムリーな話題だと思うのですが・・・。
また、政治思想の違う国同士が結びつくのは容易な事ではありませんよ。

匿名 さんのコメント...

↑フランスでは尖閣での衝突はまだニュースになっていないのでは?
中国はさらに強硬措置に出るようですしじきに大騒ぎになるかもしれませんが…

匿名 さんのコメント...

尖閣諸島の問題は一応の決着を見たようですね。実質的に中国に尖閣諸島を切り取られて、侵略したとみなされて賠償金をふっかけられて終わりです。次は沖縄ですね。

少し前からSophieさんは民主党の信者になってしまったようですね。政治家特に衆議院議員は代議士と言うように、国民の代わりに国会で代理で議論させるものです。だから自分たちが望む政治を実現してくれそうな人に投票して代わりに政治をして貰います。でも、信者にとってはその政権を維持することが全てで、そのためにあらゆる詭弁を駆使します。

ヨーロッパにいるのでしたら感じているでしょうが、近代ヨーロッパの政治は政教分離が基本です。散々宗教戦争でひどい目にあったため政治に宗教を入れないようにしようという合意が取れています。宗教というのは理屈抜きに何かを信じるものです。ローマ教皇は地上におけるキリストの代理であると誰かが言ったら無条件に受け入れる思考停止、本当にそれは正しいのかという検証は一切なされません。それが宗教です。

民主党というカルト宗教の信者はどこまで日本をボロボロにしたら目が醒めるのでしょうか。宗教だから永遠に醒めないのでしょうか。あいつら、安倍・福田・麻生政権の時に散々民意を得ていないとか、直近の民意では否定されていると言っていましたよね?でも今度は自分たちが同じことをしていますね。なぜこう言うことが許されるのでしょうか。それは宗教だからではないかと思います。ローマ教皇が無条件に偉いように、麻原昇降が無条件に尊い存在であるように、民主党は無条件で正義の政党なのです。

匿名 さんのコメント...

今のEUでなくて、昔のソ連とフィンランドあたりの関係の方が勉強材料になるかと思われます。

基地問題の時の考え方を尖閣諸島に当てはめると、「わざと弱腰外交をアピールすることによって、国民の危機意識を高める」といったところでしょうか。

いずれにせよ、国民を欺くような政治手法は長期的な国家運営に向いていないと思います。

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