2010年2月24日

ベーシック・インカムの議論が見えなくさせるもの


Quiberon, France
ベーシック・インカムよりも怠け者同盟の社会 このエントリーを含むはてなブックマーク」では、ベーシック・インカム論に対する違和感について書きました。理由は、1)最も現在の日本から遠い理論で極端に走っている気がする 2)ヨーロッパにおいて長い歴史を持つのになぜ実現されないか疑問、の二つでした。

それでも有名人がベーシック・インカムについて話し合う機会があるのはいいことだと思ってます。議論することによって現状の社会はやっぱりおかしいよねっていう問題点が明らかになるからです。討論では、まず参加者に賛成と反対を聞いていましたが、思考実験に参加することは良いことなので、当然みんな賛成でした。そんな会があったら僕だって賛成するかも知れません。でも、盛り上がりすぎた議論は積極的に反対しておいた方が良いかなと思うので、その辺について書いていこうと思います。

ベーシック・インカムの議論が盛り上がる方が望ましい人たち

ベーシック・インカムの議論は現状の問題を浮き彫りにします。しかし、その問題はベーシック・インカムでしか解決できないものでしょうか?全く新しい概念で社会を作り変えようとするアイデアなどではなく、信頼ある既存手法ではダメなのでしょうか。ヨーロッパなどに参考はありませんか。この点に関してベーシック・インカムの議論は問題があります。革命的な新しいアイデアで社会を変えるという花火が打ち上げられれば、誰でも目がそちらに行きます。つまり着実に効果がある既存手法が気に入らない人は、この花火を打ち上げることで大衆の目を逸らすことができます。皆がベーシック・インカムの議論に熱中すれば、目新しくも無い既存手法は忘れ去られるでしょう。ベーシック・インカムが大衆の目を逸らすデコイ(囮)に使われる可能性を考えなければなりません。

社会がお金を分配するときには、大きく分けて二つの方針があります。「政府がたくさんお金を徴収してたくさんお金を分配する方法(大きな政府)」と「政府は少しお金を集めて少なく分配する方法(小さな政府)」です。ベーシック・インカムはどちらかと言えば前者です(一律分配なので分配コストが削減されるという議論もありますが)。こういうふうに考えて行けば、ベーシック・インカムには賛成するけども、所得税の増税には反対といった人は少しおかしなことを言っています。ベーシック・インカムをデコイとして使っていないか、眉に唾を付けて聞いた方が良いでしょう。

つまり、お金持ちなどで税金が重くなる大きな政府が嫌いな人は、普通にやれば到達できない夢のシステム、ベーシック・インカムの議論が盛り上がってくれる方が望ましいのです。さらに、ベーシック・インカムに賛成することで、自分は金持ちだけれども、ニートやヒキコモリ、打ちのめされて死ぬことばっかり考えている人の事も考えている進歩的な人だぞ!とアピールできます。討論を見た感じこんなように腹黒く考えているように見える人はいませんでしたが、頭のイイ人はこれぐらいの計算を無意識下に行って、行動するぐらい効率の良い頭を持ってるかも知れませんからね。注意が必要です。

議論すること賛成、議論のしすぎに反対

無人島に行って肉を焼かなければいけないときに、まだ誰もチャレンジした事の無い未知の手法で火を起こそうとする人はいないでしょう。もうすでに先人が発見した方法を試すはずです。それと一緒で、未知の革命的アイデアにこだわる必要の無い局面だってあります。前のエントリでも、このエントリでも、「分配コスト削減、景気対策、ベンチャーの促進、労働者のモチベーションの変化」などなどベーシック・インカムの細かな利点・欠点については意図的に触れてきませんでした。それは、今日本がやらないければいけないことは、未知の手法の開発ではないからです。いわば大方針としてその方向じゃないと思ったからです。

ベーシック・インカムは面白い話だと思っています。だからベーシック・インカムに反対したいわけじゃないんです。だからベーシック・インカムの欠点や批判しませんし、実現可能性を攻撃たりしません。大方針を決めるならそっちじゃないと言っているだけなんです。大方針は、「過剰な競争をやめてみませんか」っていう方針を取りたいです→怠け者同盟の社会の中で輝きを取り戻す日本 このエントリーを含むはてなブックマーク

追記:
コメントにもありますが、ベーシック・インカムって小さな政府だと思っている人もいますね。確かに税収を管理する政府機能は小さくなりますが、税の徴収は大きくなりますよね。小さな政府=低福祉・低負担大きな政府=高福祉・高負担だとするとベーシック・インカムは大きな政府って事になると思うのですが、どちらなんでしょう。とにかく論旨は変わりませんが、わかりにくい人は太字のように読み替えてください(参考wikipedia:小さな政府大きな政府)。

追記2:
ポジション・トークだよねって思われそうなので、それを避ける方法を考えてみました→社会問題の議論でポジショントークを避ける二つの方法 このエントリーを含むはてなブックマーク

4 comments:

匿名 さんのコメント...

BY THE WAY,Madeleine Sophie tte nante yomuno desuka?
douiu imi desuka?

Madeleine Sophie さんのコメント...

ブログについてにあるように誕生日の聖人の名前です。なのであまり考えてないのです。

時持人 さんのコメント...

Madeleine Sophieさんの怠け者同盟のコンセプトに基本的に賛同します。しかしお金を稼ぐ意欲も能力も有る人に,怠ける美徳を説いても,受けいれられる可能性は低いと思います。“怠ける”という言葉のもつ負の印象に,勤勉で有能な彼らは生理的に拒絶反応を示すのです。それより私は彼らのお金を稼ごうとする正の意欲や能力を,ちょっとお金以外の価値を追求する方向へ振り向けるという言い方にした方が良かったのではと思います。
そこで情報発信の能力を競い合うなどというのはどうでしょうか。人間はオモシロイものを創り出して,多くの人々の賞賛を集めることに正の価値を認めているはずです。その賞賛の数を一つの軸とした競争の場を提供することで,彼らがお金という競争軸で,稼ぎ過ぎて臨界を超えてしまう弊害(国対国なら戦争が勃発)を回避できるかもしれません。
私のサイトは“怠け者同盟”に触発されて“情報発信同盟”とでもしようかしらん。
19850726131431-20100227171311-3919

匿名 さんのコメント...

あらゆる国民に最低限の給付、しかも金持ち増税は行わないというのだから、
低福祉低負担でいいんじゃないですか。

コメントを投稿