2009年11月29日

フランスで将来リーダーになる運命を感じて成長する人たち


Paris, France
フランスは18歳の時の入学試験で優秀な成績を収めたグランゼコール出身のエリートが社会を主導しています。対する日本は社会に出てからもほぼ平等な立場でリーダーの地位を目指して競争します。これに関して、日本は誰もが競争を降りることなく、希望を持って上位を目指せる環境があるから、全員が辛くなってしまうという趣旨のエントリがありました。

人生は早めに諦めよう! - Chikirinの日記 このエントリーを含むはてなブックマーク

しかし一定の年齢で、たとえばイギリスやフランスに生まれていれば小学校の終わりくらいで、「自分にはオックスブリッジやグランゼコールにいって、エリートキャリアを手に入れて、高給が約束された職業を得るのは無理だ」とわかる。
確かにフランスは18歳で上位のグランゼコールに入学すると将来のリーダー候補になり、それ以外の人は、お気楽な人生を歩むことになります。つまり、このシステムは18歳以降の順位を固定し、大器晩成を否定するシステムです。このようなシステムが日本でも受け入られるとは思いませんが、希望を持って上位を目指せる環境が全員を辛くしているというのは、あるような気がします。

このエントリでは、一般のフランス人がどんなにお気楽に幸せに過ごしているかではなく、フランスのシステムが作るエリート達について日本と比べてみていこうと思います。

人を統率することだけに特化して成長する人たち

多くの人が早めに人生を諦めることになるフランスのシステムはリーダーの資質を高めることに寄与します。18歳で上位のグランゼコールに入学すると将来リーダーになることが保証され、会社などでもリーダーになることに関係しない面倒な仕事は彼らに与えられることはありません。彼らは短期の仕事に煩わされることなく、一般の人たちよりもより遠くの未来を見通すことを自らの使命とします。彼らは将来、未来に対するビジョンを持ったリーダーになることを目的に据えて成長していきます。そして、それを周りの人からも求められているのです。

日本ではリーダーとなる人物に未来に対するビジョンが欠けていると嘆かれています。日本のシステムでは、皆が平等に競争を行うため、将来リーダーになる人にも平等に仕事を与えられます。将来リーダーになる人も平等に短期の仕事に煩わされることになるのです。そして人の抜きに出る業績で社長のイスまでたどり着いたあとに、初めて人よりも遠くの未来を見通すことを求められてしまいます。これでは、未来に対するビジョンに欠けているのも頷けます。

フランスと日本のリーダーの違いは、20歳の頃から遠く未来を見通すことだけを使命として成長してきた者と、短期の仕事をやっつけることに血道を上げてきてリーダーになった瞬間に初めてビジョンを語ることを余儀なくされる者の違いです。

グランゼコール出身者

大衆を教育するための大学とは違い、グランゼコールは少数精鋭の教育方針でリーダーとなる者を教育します(例えば、ポリテクニークは一学年フランス人400人、外国人100人ほど)。よって、ほとんどのリーダーはグランゼコール出身となります。日仏経済情報によると”フランスの上位200社の大企業では、社長の50%はENAと ポリテクニークの出身者で、エコール・デ・ミーヌや ポン・エ・ショセなどを含めると実に3分の2の企業経営のトップがこれらの官僚の出身者で占められている”そうです。

ビジョンを示すリーダーとして日本でも有名なカルロス・ゴーン氏やジャック・アタリ氏もグランゼコール出身です。ゴーン氏はミシュラン入社から3年目(27歳)で工場長、入社7年目(31歳)でブラジル・ミシュランの社長、入社11年目(35歳)で北米子会社の社長とCEOという出世をしています。まさに人を統べるためだけのキャリアといえます。

アタリ氏がミッテラン大統領の大統領補佐官になったときは38歳でした。「[書評] 21世紀の歴史——未来の人類から見た世界」を読めばわかりますが、未来への洞察力をひたすら磨いてきた人だと言うことがわかります。

(たいていの口の悪いフランス人にとってはグランゼコール出身者は悪口の対象となります。入学したら勉強なんてしないよとか、高級官僚の天下りのことをPantoufles(上履き)などと揶揄したりします。汚い地面に足をつけずに心地よい上履きのイメージでしょうか。)

彼らはとても人当たりが良い

人を統率するためだけの教育を受けてきた人に接するのは難しそうだと思いがちが、そうではないと感じています。僕がお世話になっている先生達の中には、まさにこういったキャリアを歩んできている人たちがいますが、彼らは例外なく誰に対しても快く接することができる人物だと感じます。

ミーティングなどでは、論理的に自然に議論を主導していきます。また、工学の先生なのに歴史や文化への造詣が深く、雑談の折に触れて若い学生にも基礎から語ってくれたりします。うちのチームは学生から教授まで全て、親しい者に対する「あなた」を意味するtuを使って会話していますが(普通は目上の者に対する「あなた」はvous)、工学の議論でもいつでも対等な立場で議論しているような印象を与えています。

出張でこの教授と長く2人の時間があったときは、事前にそれなりに緊張していましたが、実際はすごく楽しい時間を過ごせました。日本とフランスの比較などで僕の意見を熱心に聞いてくれたり、自説を披露したりしてくれただけでなく、家族構成や家族の歴史なども話し合うことができ、親しい感じの印象を与えてくれます。また、わからないことがあったり、確信が持てないことがあったりすると、自然な感じで僕の意見を求めてくれたりします。

理念をもって、誰よりも遠い未来への洞察を求めて、人の上に立つ運命を感じながら成長して、余裕がある人物がこういう風になるんだなという風に感じています。

13 comments:

匿名 さんのコメント...

日本もエリート教育をしましょう
日教組はゴミです

今の教育は最下層に皆がレベルを合わせる教育です。

これこそ不平等教育でしょう

飛び級制度を復活しましょう

出来の良い者は良い者同士
出来の悪い者は悪い者同士

勉強をしていればいいのです。

なんで馬鹿。馬鹿どもにレベルを合わせる。
この世はそんなに甘くはないでしょう

最下層の愚民は一部のエリートに奴隷のように使われるのが、最も良い。

不良・怠け者。
こんな奴らが社会で何不自由なく生活ができる。

そんな世の中が間違っている。

身の程を知りなさい。馬鹿ども。

花園 祐 さんのコメント...

 多少内容が違うかもしれませんが、私の「陽月秘話」の方で日本でのエリート教育の是非について記事を書いてみました。そっちの記事では書ききれませんでしたが、エリート教育を行うにはまず前提として、ノブレス・オブリージュが社会全体の基本概念としてないとまず機能しないと思います。今の日本だとそんな概念が薄いから、エリート教育を進めるならこちらの概念定着も同時に進行させる必要があるかと思っています。

Madeleine Sophie さんのコメント...

花園さん、

フランスの仕組みをそのまま日本に持って行くのは難しいだろうな〜と思います。みんなが希望を持ってしまうからみんなが頑張ってつらくなるという論理はわかりますが、日本が変わるのはすぐには無理でしょうね。日本は今の基本路線を変えずに、少しずつ変わっていくぐらいで良いような気もしています。

Madeleine Sophie さんのコメント...

匿名さんのコメントは、エントリの趣旨に賛成なのか、批判もしくは皮肉なのか:..w

匿名 さんのコメント...

賛成ですよ

今の日本の教育制度ではエリートの育成どころか、逆にエリートの足を引っ張っていると思うのです。

sara さんのコメント...

はじめまして。現在マドリードに住んでいます。グランゼコール出身の友人がいますが、確かに気さくでオープンですね。その上尋常じゃない仕事量!家族と過ごす時間はあるの???と他人事ながら心配になるくらいです。たまに仕事に同行させてもらいますが、使命感というか積極性が、日本の同じ役職の方とは、まったく異なる印象を受けます。“いろんな会合やイベントに参加しているけど、日本からの代表はほとんど顔を見せない”と度々おっしゃってました。“日本人の場合は言葉のハンデもあるしね。”とフォロー(?)してましたけど。。。
和を尊ぶ日本の風土には、少数精鋭のエリート教育というのが受け入れられるかはわかりませんが、やはり人の上に立つ人物、もしくはそのような地位に就いている方には、それに相応しい理念と自覚を持って欲しいと思います。

匿名 さんのコメント...

こんにちは。興味深く拝見させていただいています。

この件は思想的な問題もあって、少なくとも建前的には大器晩成型を受け入れるという意味において日本型の方が(少なくとも日本人にとっては)美しいので、他の可能性を徹底的に検証しない限りは受け入れがたい物なのではないかと思います。

この問題の本質は、若い頃からエリートを選抜して育成するということより、適正な基準で選抜するということなのではないかと思います。果たして適正な基準とは何か?という問題はありますが(自らの境遇への不満が、自由競争への渇望に向かうのもこれが理由でしょう)、そのあたりの議論をすっ飛ばしてエリート養成に行くのは目くらましかな、という気がします。
一方の育成に関して言うと、論理とか議論の仕方という面では、必ずしもエリート教育が必要であるとは言えないのではないかという気がします。(そもそも教育の質以前に、特殊なルートを進まないとこれらを学ぶ機会自体が無いのでは?)教養の面はおっしゃる通りで、なかなか難しいと思います。一定の水準までは引き上げて、あとは大器晩成を受け入れる社会とのトレードオフとして甘受せざるをえないのかなと思います。

Madeleine Sophie さんのコメント...

saraさん、
初めまして。グランゼコール出身の人はすごくはたらく人がいるそうですね。逆もあるんでしょうけれども。

匿名さん、
どんなシステムにも利点と欠点がありますからね。フランスの仕組みの方が良いとは思いません。特に日本では受け入れられないでしょうね。

DODOLELA さんのコメント...

ごぶさたです!日本企業社会の底辺で働いた後(苦笑)、グランゼコールで学んだ者として、コメントします~。

おっしゃるとおり、日仏教育双方いいところと悪いところがあるので何とも言えませんが、私が日本で働いていたときにずっと考えていたことがあります。

日本企業では通常「底辺の仕事」がある程度、相当年数かけてできるようになってから昇進させますが、「底辺の仕事ができる能力」とマネジメント能力はまったく違うものです。(底辺の仕事が劣っているといいたいわけではありません。企業の末端で仕事をする人がいるからこそ社会は成り立っているのです)

管理する立場になる以上、管理される立場になってその人たちの気持ちを理解することも必要ですが、優秀な若者にいつまでたっても雑巾がけのような仕事しかさせないのも、どうかと思います。雇用する側、雇用される側共に完全なる機会損失であると思います。

そういう意味で、明確なビジョンや指導力をトレーニングするエリート教育は必要なのかと思います。(しつこいようですが、かといってフランス式をそのまま受け入れるのがいいわけではありませんね)

Madeleine Sophie さんのコメント...

DODOLELAさん、

フランスに来てから、エリート教育の必要性は、分かるようになりましたね。20歳からマネジメントの経験を積んできたエリートと、40歳からマネジメントの勉強を始めた部長では、みている世界が全く違うでしょうからね。

それでも、このシステムを日本に持って行くのは難しいのはすごく感じています。DODOLELAさんは、フランスでグランゼコール出身と言うことですので、人の上に立つときのために必要な資質をつけてくださいね。:)

az さんのコメント...

初めまして、いつも楽しく拝見しています。

昔の日本では高校や大学への進学は、限られた人しかできませんでしたので、そういった自負を抱く事があったと聞きます。
現在では大学が増え、誰でも入れるようになってしまいましたから、これからの少子化で大学が淘汰されれば変わってくるかもしれないと思ってます。エリート層を作るというより、高校生の時に、進学する意味、学ぶ意味を考えれらるようになるといいなと思います。

自分は技術職ですが、やはり技術とマネージメントは別物だと感じますし、技術職にマネージメントを求めてもあまり意欲が伴い事が多いです。
そういった意味でも役割を分離できるといいんでしょうか、バックグランドの違いから生まれる視点の違いをどう埋めるかが課題だと思います。
管理職と現場では、価値観や重点におくものも全然違いますので。

グローバリズムの名のもと海外の手法を色々取り入れてきたので、そろそろ見直しの時期ではないかと思っています。
将来訪れる問題に対して国内も変わらなければなない事を意識していると感じますから、いい方向に改善していけるといいなと思います。
いいところを取り込んでカスタマイズするのは、本来得意分野なはずなので。

milia639 さんのコメント...

大器晩成を否定、それだけ早く成熟すると言うことですよね。リーダー層もそうでない人も。
リーダーの道を選ぶのも、別の職業の道を選ぶのも、選択した時点で他の何かになる可能性を諦めているんですよ。だから成熟してるんでしょうね。

ただ心配なのは、エリートで無い層の人々が、グローバルに人材が流動する世の中で、住み心地良くそのぶん物価も高い先進国で生活するだけの収入を得続けることができるのか、というところです。
これはフランスの非エリート層だけでなく、日本や他の先進国でも心配なところです。というか、全員にエリート教育ってのは困難だから、原理的には住み続けることがムリなのをどうするか。

Madeleine Sophie さんのコメント...

azさん、
初めまして。コメントありがとうございます。カスタマイズして取り込むのが日本人の得意とするところだというのは感じますね。上手く取捨選択できると良いのですが、あっちをたたせると、こっちがたたずみたいな所もありますからね。

millia639さん、
フランス人はどちらかというと逆に考えていそうです。

自分は頑張りたくないけど、どうすれば生きていけるか→優秀なやつに予算を大量投下(投資)して頑張ってもらえば、自分も安泰

みたいな。だからこそ、不平等と思えるエリート優遇も耐えていられるんじゃないでしょうか。推測ですけれども。

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