2009年8月1日

怠け者同盟の社会と働き者の社会の間の競争の中のフランス


Paris, France
競争を抑制することによって、社会と構成員の負荷を減らし、減らした負荷を人の「幸福」のために使うようにするというコンセプトを、「怠け者同盟の社会は人類の未来」で紹介しました。その次に、怠け者同盟の社会が持つ、グローバル市場では働き者の社会に敗れる弱点を克服する手段について考察してきました。その手段とは、「怠け者同盟の社会が働き者の社会に対抗する手段」で述べたように、1.怠け者同盟の拡大と2.同盟の論理の構築というアプローチでした。この戦略は今のフランスに最も適したアプローチです。

世界に理念を波及させる国、フランス

ある問題を解決するために、自らを変化させる国が日本だとすると、世界を変化させる国がフランスと言えます。例えば”グローバルな競争が人間を幸せにしないこと”を日仏両国が気づいたとします。日本は、怠け者の社会というのがグローバルな競争において敗北を喫することを理解し、怠け者の社会を作ることを諦めるでしょう。しかし、フランスは違います。フランスは、怠け者の社会というのがグローバルな競争において敗北を喫することを理解し、世界のほうを変えようとします。なぜなら、「グローバルな競争が人間を幸せにしない」という信念が正しく、世界が間違っていると信ずるからです。フランスは自らの理念を通すために世界を変えようとする国です。最新の研究によると、日本の外交方針は妥協型外交、フランスの外交方針は放射型外交に属するそうです。
放射型外交のフランスと妥協型外交の日本
放射型外交」(politiques étrangères de projection)とは、政治的、経済的、文化的な影響力を自国の領土の外に積極的に及ぼそうとするもので、威信や栄光、偉大さやパワーなどといった概念が重要視される。その典型とされるのは、米国とフランスである。(P.50)
欧州の中原にあるこの国では昔から異なる意見を持つ人々が交流してきました。仲間を募ったり、異なる理念を戦わせたりする中で理論を構築し波及する能力が優れるようになったのではないかと思います。

美しい論理の裏にあるフランスの国益

フランスが反論のしようのない美しい論理を構築するときは、多くの場合その背後にフランスの国益が潜んでいます。その点が、フランスのしたたかさであり、世界の国々に警戒されている点でもあります。

この場合のフランスの国益とは、既に先進国となったフランスが途上国の必死の頑張りによる追い上げを封じることにあります。アジアや南米などの台頭する新興国の労働環境を人権侵害と非難することで、労働において一定基準を満たさない新興国の製品を、EU市場から排除する可能性もあります。怠け者ルールの適応は先進国が途上国にかける足かせともなるのです。先進国同盟に都合のいいこのルールは、フランスが他の先進国に対して同盟への加入を説得する時にも役立つことでしょう。

怠け者ルールが同盟の拡大を困難にするジレンマ

1.怠け者同盟の拡大と2.怠け者ルールの適応が同時に達成できる目標だったら話は早いのですが、そうではありません。つまり、怠け者同盟において急激に怠け者ルールを適応してしまうと、怠け者同盟の社会が相対的に経済的に弱体化してしまいます。35時間労働、長期バカンスの国では生産、消費などの活動が抑えられます。怠け者同盟の市場規模が低下すれば、働き者の製品を排除する効果が薄れます。これは、怠け者同盟の社会であっても働き者の社会に対抗するためには、ある程度の競争力が必要なことを示します。”怠け者ルールを適応すれば同盟拡大の影響力が低下する”、”同盟を拡大するには一生懸命働き経済的に強くなり影響力を確保しなければならない”というジレンマです。

ジレンマの中での働き者の社会への揺り戻し

2007年のフランス大統領選挙はこのジレンマの中で、怠け者ルールの適応を加速するか、怠け者ルールがもたらすフランスの経済力の低下に歯止めをかけるかが焦点となりました。結果は、「もっと働き、もっと稼ごう (travailler plus pour gagner plus)」と主張したサルコジ大統領の勝利で幕を下ろしました。「怠け者同盟の社会が働き者の社会に対抗する手段」で述べた戦略は、フランス国民からその時点では夢想的すぎて非現実的だと捉えられました。現実路線のサルコジ氏の得票率が53.06%、未来の社会である怠け者同盟の社会を目指したロワイヤル氏の得票率が46.94%でした。大まかに言えばその時点での「怠け者同盟の拡大と同盟の論理の適応」というアプローチへの支持・不支持率だといえます。

2007年はサブプライムローンに始まる経済危機の前ですので、世の中は自由主義的な市場経済が頂点に達していた頃です。フランス国民にとっては未来の社会を目指していくよりも、米英の好況を目にして、自国の影響力の低下を無視できなくなったという側面がありました。現在、フランスは同盟の拡大と、同盟の論理による国際的フレームワークの構築を諦めていないように感じます。自国の理念を波及するには、それしか手が無いように見えるからです。将来、自由主義的な市場経済への風当たりが強くなった時や、非人道的な労働への圧力が強まったとき、フランスは世論の流れを見て怠け者が作る未来の社会の世界的展開に再び手をつけるでしょう。

以下のエントリを予定しています。
  1. 怠け者同盟の社会のまとめ
  2. 怠け者同盟の社会は人類の未来
  3. 怠け者同盟の社会が働き者の社会に対抗する手段
  4. 怠け者同盟の社会と働き者の社会の間の競争の中のフランス(本エントリ)
  5. 怠け者同盟の社会と働き者の社会の間の競争の中の日本
  6. 怠け者同盟の社会の中で輝きを取り戻す日本
  7. 自由のスパイラルから脱出を目指す怠け者同盟
  8. 労働に対する社会の仕組みを試験に例える
  9. ベーシック・インカムよりも怠け者同盟の社会 このエントリーを含むはてなブックマーク

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