2009年7月24日

[書評] 戦争で読む「ローマ帝国史」 建国から滅亡に至る63の戦い

戦争で読む「ローマ帝国史」 建国から滅亡に至る63の戦い (PHP文庫)小さな羊飼いの集落から、地中海世界を制覇する古代の超大国にのし上がっていったローマ帝国の歴史を戦争を通じて解説している本です。”ローマ期とは神話時代である紀元前八世紀から、西ローマ帝国の滅亡する起源五世紀までの1200年余りにかけて(p.3)”のことです。友人に「塩野七生『ローマ人の物語』|単行本|新潮社」を勧められたのですが、時間が無くて読めず、一冊で完結する本書を購入しました。「ハンニバル」、「カエサル」、「クレオパトラ」といった歴史上の人物が織り成す物語を再確認できたのは、楽しかったです。

現在のEU各国のうち、ドイツの一部を除いてほとんどがローマの版図に組み入れられていました。そればかりか、トルコや地中海を挟んだ北アフリカも版図に組み入れています。ヨーロッパ諸国がある程度、文化と歴史を共有する元となりました。120年時点のローマ帝国の版図が最大になった時の地図を張っておきます。この頃の皇帝は、五賢帝と呼ばれています。
読んでみて、ローマは最強の帝国だった時でもちょくちょく戦争に負けていたんだな、と知りました。対戦相手の戦象のあまりの大きさに慌てふためいて、何度もやられたり、皇帝自らが戦いで敗死したり、とらわれて相手側のリーダーの奴隷にされたりと順風満帆ではありません。それでも総合的に見ればローマ帝国はその時代に一番強かったため、どんどん版図を拡大していきます。カルタゴのハンニバルに苦しめられてから、3度にわたるポエニ戦争に勝利してカルタゴを滅ぼします。
カルタゴはハンニバルがローマを今一歩まで追い詰めた第二次ポエニ戦争後、生殺与奪をローマに握られた恰好で存在した。しかしながらその商業力は抜群で、軍事でなく商業で地中海の覇権を握った。(p.106)
カルタゴ元老院はローマに屈服していたから、貴族の子弟300人を人質としローマに送る、との要求を呑んでしまう。次いでローマは兵器や装備の引き渡しを要求したので、これまたローマ軍に従った。そうしたところ今度は海岸より離れ、奥地へ10マイル移れという無理難題を吹っかけられた。流石にこれはカルタゴ元老院も、自殺行為だと反発を見せた。つまり丸裸にされてから本当の狙いを突きつけられたのである。(p.106)
カルタゴは軍隊が負けた後も、ローマに賠償金を払いつつ繁栄を続けます。それを危険視したローマはカルタゴに、いちゃもんをつけて滅ぼしてしまいます。強いものが勝つという歴史の常を再確認するようです。本書は、序盤で、すこしローマに肩入れしすぎているような印象を持ちました。例えば、カルタゴは以下のように描かれています。つねに勝者によって語られる歴史で、敗者の印象は後から付けられた部分もあるでしょう。本来は、戦火を交えた、どちらの勢力に善悪は無いはずです。本書にはそのあたりを慎重に描いてほしいように感じました。
カルタゴは歴史的にみても、極めて人間性の悪い国家である。敗北した軍司令官は処刑し、国民相互間の不信感も根強い。その上に嫉妬心はどの民族より激しかった。古来から「カルタゴ」という言葉は、裏切りを意味すると言われたほどだ。(p.81)
この本では目次の情報は探しても見つからなかったのですが、代わりにGoogle Book Searchで始めから85ページまで読めるようになっていました。下のウィンドウで⇒のボタンをクリックしていくと目次のページも読めます。
戦争で読む「ローマ帝国史」 建国から滅亡に至る63の戦い (PHP文庫)
柘植 久慶 (著)

ローマの歴史は“戦争の歴史”である——。ティベリス河畔の小さな羊飼いの集落から、地中海世界を制覇する古代の超大国にのし上がっていった事実は、まさにそれを裏付けていると言える。本書は、神話時代に遡る「建国当時の戦い」から、西ローマ帝国が滅亡する「ヴァンダル人のローマ征服」まで、ローマ帝国1200年余りの歴史を戦争の視点から解説していく。国家崩壊の危機に直面したハンニバルの侵攻(「第二次ポエニ戦争」)、三頭政治から後の帝政時代へと道を開いた「カエサル対ポンペイウス」、五賢帝の一人としてローマの版図拡大に力を注いだトラヤヌス帝(「第二次ダキア遠征」)、帝国の4分割による「帝位争奪の内戦」など、取り上げる主な戦争は63に及ぶ。また、その間に起こった戦術の変化や武器の進歩、軍団の改革についても、戦場経験をもつ著者独自の視点から紹介。ローマの命運を決した戦いの数々がここにある。▼ 文庫書き下ろし。(セブンアンドワイ ヤフー店 - Yahoo!ショッピング)

2 comments:

匿名 さんのコメント...

カルタゴに対してのローマについて。領土をみずから侵すようなちょっかいを出して、言いがかりをつけるローマのやりかたもよっぽど性格悪いとは思いますが、ハンニバルがローマ討伐にして足を引っ張ってしまったというカルタゴの嫉み深い国民性についてもあながちうそではないかと思います。私は興味深く読みましたよ。

Madeleine Sophie さんのコメント...

そうですね。カルタゴの判断ミスはカルタゴの嫉妬深い国民性から来ているとも見れますよね。本書ではそういう立場でしたね。それでも、ローマはカルタゴが滅んでからも何世紀も繁栄を続けています。憎悪の対象となったカルタゴをあとから悪く言った面もあったのではないかと想像するのです。

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