2009年6月17日

世襲政治問題のためにプロセスを見直そう


Menton, France
日本は俗に「経済一流、政治三流」と言われますが、海外のメチャクチャにひどい政治家を見ていると、日本の政治ってそんなにひどいのかなと疑問に感じていました。フランスに渡って気づいたのは、やっぱり日本の政治はフランスよりは洗練されていないと言うことです。おおざっぱに言うと日本の政治は最悪ではないが、議論が無くて世の中の雰囲気で決まっているという点を感じます。フランスでは僕の周りにいる研究者/技術者といった政治と関係なさそうな人でも政治について、よく議論しています(左派と右派の意見が近いフランス人の政治議論フランス人の議論を信頼する)。政治議論の裾野の広さを感じます。

世襲議員の制限の問題では、この議論の無さが有権者と世襲議員の双方を不幸にしているように感じます。「世襲だろうが国民のことを考える政治家が良い政治家」とか「世襲は民主主義の平等を損ねている」とか「世襲だろうが有権者に選ばれているのは事実」とか、「世襲だからダメだという考えはない(武部氏)」とか、その場の雰囲気で議論が終わってしまいます。そして有権者は、最初から有利な世襲議員がいることで、世襲でなければ政治家になれないと思って不幸になり、世襲議員は時々起こる世襲議員叩きにあって、投票と言う正当な手段で議員となったにもかかわらず、雰囲気で叩かれるという不幸が起こっています。

このサイトでは、世襲議員=無能者とされてしまっています→世襲議員の無能者リスト 日本の政治改革。しかし、世襲議員が必ずしも無能とは限らないのは当然です。むしろ平均すると世襲候補はそれ以外の候補よりも有能であると思います。幼少の頃より身近な人の政治の仕事ぶりに触れ、考え方を学ぶことのできる点では他の候補より有利です。これは、教師の子が勉強できたりするのと一緒で、その家庭で育ったことによって獲得する文化資産だといえます。文化資産には相続税がないので、代をまたいで蓄積する傾向があります。

世襲候補はその他の候補より有能であることが多いと信じるからこそ、その有利な点を除外して選挙を戦ってほしいと思います。有権者が自身の意見を代表してくれる候補を選び、より多くの有権者の意見を代表する候補が議員になるという平等な民主主義のプロセスにおいて、ある候補に特別に有利なゲタがあるならそれを規制するのは理にかなっています。俗に言われる「三バン(看板=親の名前、カバン=お金、地盤)」です。看板は変えることができないし、お金はある程度規制されているので、その他の要素を規制するべきです。つまり地盤です。

ある地域で有権者の意見をまとめ、組織票を獲得すれば、その組織票を使って子、孫、ひ孫と代々政治家になれる仕組みは間違っています。子孫の代では一般の候補者と対等の条件で選挙を戦ってないことになってしまうからです。僕は、世襲候補は親と違う選挙区から出馬すると言う規制を支持します。市民革命を主導したフランス人からすれば以下のような感想でしょう。
[書評] 日本とフランス 二つの民主主義
そもそも、民主主義の出発点である市民革命は、世襲支配を打ち倒す戦いだったはずである、親類縁者の中で議席が世襲されるのであれば、選挙などまったく意味を失ってしまう。
選挙のプロセスで一般の候補者と世襲候補が対等でないとすれば、選挙プロセスで有利だった世襲議員の正当性に疑問が付くのは当然の帰結です。世襲議員は世襲規制に反対することが多いようですが、世襲を規制し、選挙プロセスで一般議員と対等の条件で当選することで、世襲議員は自身が持つ政治資質の正当性を主張することができるようになります。一般候補と対等の条件で選挙に選ばれたことは、自身の政治資質の証明になるからです。

有権者が世襲候補と一般候補は対等な立場で選挙を戦っていると確信できる制度は、有権者にとって利益があるものです。また、対等な制度では当選した世襲議員が世襲と言う理由で叩かれることが無くなるので、世襲議員にとっても利益があります。現状の世襲候補有利な制度は有権者と世襲議員の双方を不幸にしていると言えます。小泉氏、安倍氏、福田氏、麻生氏と約10年間の内閣総理大臣が世襲の日本では、政治は世襲され変わらないという無力感が蔓延し始めているように感じます。最近、自民党での世襲規制は見送られましたが、無力感がこれ以上増大しないうちに早めに選挙プロセスを見直すべきでしょう。

2 comments:

花園 祐 さんのコメント...

 自分もよく思いますが、日本での世襲議員についての議論は国民を含めて前提が個人ごと違っており、どうも全体で一つの議論としてまとまらないところがある気がします。私などは以前に田原総一朗氏が言っていた言葉で、
「現実に世襲出身で政権を突然放り投げるような無能な国会議員がたくさんいるのだから、どうにかしなければ」
 という発言に沿って、如何に優秀で国のことを思ってくれる人間を議会に送れるかという、選挙制度の改革原則としてこの問題を話しています。

Madeleine Sophie さんのコメント...

選挙がまともに機能すれば、優秀な人が当選するかどうかはまた分かりませんが、現状よりは多少マシになるかもしれませんよね。10年間ちかく総理大臣が世襲出身と言うことは、僕らが選挙権を持ってから以降は世襲議員しか総理大臣になってないことになりますね。この状態が長く続くのは、まずいですよね。

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