2009年6月8日

[書評] 島国根性 大陸根性 半島根性

島国根性 大陸根性 半島根性 (青春新書インテリジェンスシリーズ)日本、中国、韓国の文化的違いについて書いてある本でした。本の帯には、「日本在住の韓国系中国人学者だからわかる日本・中国・韓国文化の"スレ違い"の深層とは!」と書かれています。著者はこの三国のどの文化にも詳しい学者(日・中・韓比較文化学者 金文学さん)だそうです。文化的な違いを指摘するときには、あまりに詳細に見てしまうと意味がなくなってしまうために、ある程度の近似値でレッテルを貼る必要があります。こういった議論はレッテルを貼らないと議論が先に進まないので、本書では各所にいろいろなレッテルが張られています。「「レッテル貼り」に貼られたレッテル」では、レッテル貼りは一時思考を停止させて議論を先に進めるために必要だと、書きましたが本書はこれを地で行っている感じがしました。

この三ヵ国をいろいろな角度から比較していく試みは面白かったのですが、本を読んで全般的に感じたのは中国とフランスの類似性です。どちらも大陸の中央に位置している国家であるために類似しているんだと気づきました。細かいことを気にしないおおらかさや、議論を好み、理念を重視し、面子を気にするところなどです。

大陸はまず、多種多様な民族の上に人工的に作られた国だという特徴があります。中国は漢民族と56少数民族で構成されていると言われますが、フランスも始めて国民国家が誕生した時代には、ほとんどイタリアの地方みたいだったニースや、ほとんどドイツみたいだったストラスブールをフランスに組み込んでいます。欧州もその昔は文化や民族がグラデーションのように分布していたところに、フランスという国家を人工的に作ったという点でも類似しています。この2国では人口が20倍も違ったりするので、濃淡はまったく違いますが、雰囲気みたいなものや考え方の方向性が似ている感じます。
大陸は、日本と正反対で、きわめて不自然な人口国家である。言語、宗教の異なる多様な民族を統一するために理念イデオロギーや闘争が欠かせなかった。...(略)...中国人をバラバラに散った砂だと言ったのは中国革命の父・孫文である。この砂をまとめるための触媒は、確固たるロマンをもつ理念やイデオロギーでなければならない。(p.103)
大陸の作り出す理念というのは結晶の純度が高いというか、異論を挟む余地のない、他に解釈のしようのないものが多いです。例えば、自由と平等を基とする民主主義という概念などはその一例です。個人個人の利害がいかに対立しようとも、全員がもっとも納得できる理念を求めた結果だという気がします。日本のように個別の事案の利害対立を解消していくようなアプローチでは大陸ではやっていけないのでしょう。明治維新も日本全国の三百諸侯をまとめるために普遍的なイデオロギーである天皇をトップに持ってましたが、全世界を見渡すと普遍性はかなり低いといわざるを得ません。著者は日中韓を大豆にたとえますが、フランスもまた「たらいのなかの大豆」が近いと思います。
仮に大豆で日中韓三ヶ国の人間関係のあり方をたとえれば、日本社会は、納豆のような形をしている。一粒一粒が独立してはいるが、ねばねばした糸で仲良くつながっている。中国人はたらいのなかの大豆のようにたらいという統一理念、規律からはなれると、バラバラに散らばってしまう。(p.149)
次に思想の純度・普遍性は大陸が最も高いという例で、宗教を挙げています。
世界中の哲学・思想のほとんどが大陸国家で誕生した。孔子、釈迦、キリスト、マホメットもみな大陸の人物である(p.99)
僕が常々、フランスは”戦略、戦術、謀略”において、日本がかなう相手ではないと思っています。著者は、これを”戦略、戦術、謀略においては中国人に及ぶ民族は世界中でも存在しない”と言っています。やはり、フランスと中国は大陸性においてかなり近いのではないかと思います。
これは、私の主観的な意見だが、中国では人間関係の哲学的理念が中国文化の中核に占拠しており、他の些細なことは軽視または無視してもよいほどだった。戦略、戦術、謀略においては中国人に及ぶ民族は世界中でも存在しないといっても過言ではない。(p.126)
最後に国を象徴する動物も一緒でした。そしてその理由も一緒です。
中国人は、中国の国土の形をよく雄鶏にたとえる。私が小学生に入った頃、担任の先生から祖国中国の形は美しい雄鶏に似ていて、当方の大地に立って世界に声高く革命を唱えているのだといわれたものだ。(p.94)
フランスの象徴も雄鶏です。「不潔なオリの中で糞を踏んづけながらも、声高に理想を叫ぶ」と揶揄されます。褒めるにも貶すにも使える雄鶏のイメージはフランスにぴったりかもしれません。ちなみにフランス大使館の「フランス共和国を表すシンボル」を見てみると、以下の通りに書かれていました。
ラテン語で雄鶏とガリア人を表す単語が似ている(Gallus gallicus)ため、昔からフランス文化に深く根付いていた。また雄鶏のもつ闘魂と勇猛さが、フランス人の美徳と重なるという、フランス人にとって嬉しい評もある。
島国根性 大陸根性 半島根性 (青春新書インテリジェンスシリーズ)
金 文学 (著)

序章 なぜ日中韓はこんなにもスレ違うのか
第1章 島国根性 大陸根性 半島根性
第2章 木の文化 石の文化 土の文化
第3章 和の国 闘の国 情の国
第4章 「人」「神」「自然」に見る思考様式の違い
終章 日中韓は“違う”からこそうまくいく

作家、比較文化学者。1962年、中国の瀋陽で韓国系3世として生まれる。東北師範大学日本文学科卒業。遼寧教育大学講師を経て、1991年来日。同志社大学大学院で修士課程修了。1994年から同大学文学部客員研究員、京都大学客員研究員。2001年広島大学大学院博士課程修了。現在、呉大学社会情報学部、福山大学人間文化学部非常勤講師。専門は、比較文学・比較文化および文化人類学。現在日本を中心に日中韓3カ国語による執筆、講演活動、テレビ放送界などで活躍中。著書は3カ国で40冊を超える。中国では文学賞を多数受賞。国際舞台で活躍する知日派新世代知性の旗手、国際派文化鬼才として、高い評価を得ている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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