2009年5月16日

フランスではアメリカを悪者にすればOK


Versailles, France
今週でフランスに来てから丸2年になります。フランスに来るまで全く意識しなかったことで、フランスでよく知られている事実として日本が捕鯨に賛成している点があります。「日本人はなんで絶滅しそうなクジラをそんなにしてまで食べたいの?」とフランス人に最初に問われたのは、渡仏後すぐのことでした。その時は、クジラなんて食べたことも無くて、両親ですら食べたことがあるか、ないかの全くなじみのない生活を送っていたので、ただただ食べたことないと愛想笑いするしか無かったことを覚えています。

それから、2年で3回ほど質問されたことがありました。それほど頻度の多い質問ではないですが、フランスで日本の捕鯨に対する態度を問われた時は、日本を擁護する立場に立って反論する方が面白いと思います。わざわざフランス人が質問しているときには議論を望んでいることが多いからです。同意してしまってはそこで話が終わってしまいます。フランスは反捕鯨の国ですが、一般のフランス人は険悪な議論になるほどクジラに思い入れが無いし、僕も絶対に譲れない議論でもないため、楽しいおしゃべりが期待できます。

フランス人「日本が調査のために1000頭のクジラを捕ったってテレビでやってたよ。調査じゃないよね、絶対売ったり、食べたり、商売にしているよ。」
「絶滅しそうも無いクジラの種類も多いんだって。それにクジラがたくさんの魚を食べちゃうんだよ。だから、少しは捕鯨しないと魚が減少しちゃうんだって。」
フランス人「だめだよ!笑」

みたいな感じです。まあ、周りはフランス人か留学生なのでたった一人の日本人が反論していたとしても分が悪いのですが、フランスのテレビでやってない反論に少しは納得したり、話題を楽しんだりします。これを、アメリカを悪者にすると、日本とフランスが味方みたいな感じになって、なぜか納得されやすいのです。例えば、

「そもそも日本は伝統的にクジラを食べていた。クジラの肉は食べるし、油は使うし、骨は工芸品にする。全く無駄はなかったんだよ。それがアメリカがクジラの油を取るために殺しまくった結果、クジラが減ったんだよ。今は石油があるからって、捕鯨反対って(アメリカは)都合が良すぎるんだよ。」

フランス人たち「そう!アメリカが悪いんだよ。アメリカはいつでもそうだ。」となったりします。同じような場面を、日仏カップルの方が書かれていました。すごく分かります。
チーズの国へ、ようこそ: フランスの誇り、日本の誇り

私:日本はアメリカの圧力で、飛行機を作ることが出来なかったんだって。

夫:そう! 知ってるよ。そうなんだよ、アメリカって国はそういう国なんだ!

( アメリカがいかに悪い国かについて語る夫・・・)
こう書くと、やっぱりフランス人はアメリカが嫌いなんだなと思われそうですが、そう簡単な感情ではありません。たしかに、表立ってはアメリカを絶賛する人は少ないです。アメリカでは、まずいポテトとハンバーガーを年中食って、水のように薄いコーヒーをがぶ飲みしないといけないなどと言わなければなりません。同僚が3ヶ月テキサスに行かなければならなかったときには、アメリカの食事には2週間以上は耐えられないだろうと言っていました...。また、国際政治の問題でもフランスはいつでもアメリカに反対と言われるぐらいに対立します(例:「正論を主張する国「イラク戦争に反対したフランス」」)。

それでも、多くのフランス人はアメリカのことを悪く思っていません。むしろ、最新のテクノロジーや流行の発信などによって憧れに近いものを持っていると思います。(統計にすると長い間40%がアメリカに好感、10%が反感→フランスにおけるアンチアメリカニズム(PDF)。)いつでもアメリカに反対しつつも、憧れるというこの感覚をうまく説明するのは難しいと思うのですが、強いて例えるとすればフランス=老人、アメリカ=青年と擬人化すると分かりやすいと思います。

フランス(老人)はいつでもアメリカ(青年)よりも世界のことを良く理解して、より遠い未来のことも見通していると考えています。また、アメリカのやることなすことが短絡的に見えてしまいます。その一方、フランスにはアメリカのように自分の考えを他人に影響を及ぼしながら実現していく体力がありません。短絡的だろうが何だろうが何でも強力に押し進める力があるアメリカをすこし羨ましく見ています。冒頭のアメリカの悪者っぷりをおもしろがる心情を老人と青年に置き換えると少し分かりやすいかもしれません。

最後にフランスがアメリカよりも世界のことをよく理解していて、より遠い未来を見通しているなどということは、フランス人だけが思い込んでいる冗談にしか聞こえない人が多いかもしれませんが、最近は一理ある気がしています。このブログで書くと著者がフランスかぶれと思われると思いますが、ソシアリスム人種間の平等テロリズムへの対応などは、遠い未来を見据えるとアメリカの方法よりも正しい可能性があるような気がしています。

追記:
フランスから見たアメリカのイメージを「フランス=老人、アメリカ=青年」の擬人化で書いてみました→フランスから見えるアメリカは浅はかな国

3 comments:

花園 祐 さんのコメント...

 ちょっと記事の趣旨とは異なるかもしれませんが、以前に塩野七生氏がある外国人との会話の中で、
「アメリカが憎まれる理由の大半は、(世界一富を持っているという)妬みからだ」
 という話があったことを紹介し、毎年世界各国にODAをばら撒いているにもかかわらず一部の国から嫌われている日本も、無関係ではないのではというエッセイを読んだことがあります。

 そういう意味で、Sophieさんの言う様にフランス人がアメリカに反対しつつ憧れを持つというのがこの妬みからとなると、なんとなく自分の中ではストンと落ちてきます。
 なお先ほどのエッセイの続きに塩野氏は、「ただお金を配ればみんなが好きになってくれるわけではない」として、途上国支援の仕方をもっと目に見える形でやる必要があるとまとめていました。

Madeleine Sophie さんのコメント...

花園さん、

アメリカは世界一裕福だから妬まれるという面は否定できないかもしれませんね。それを差し引いても自分の国だけ良ければ良いというような考え方も近年見られるように感じます。世界一強い国が他国を攻撃できるような世界を作っていると感じられます。そんなことをすれば何でもありの世界になってしまいます。

日本はアメリカの振り見て我が振り直せというのは確かにそうかもしれません。支援もパフォーマンスの一種と割り切って効率的/戦術的な支援も視野に入れても良いかもしれませんね。

2syu_denki Kouji さんのコメント...

日本は、むやみに捕鯨している訳ではないと思いますね。私自身フランスの方々と同じ意見ですから。捕鯨反対につきました。クジラの激減ですが、どうやらアメリカの陰謀らしいです。クジラの油ですか・・・・あたってます。昔の日本の漁船では、クジラを捕ることは不可能なくらいです。沈没してしまいます。大きい船でないと数多くのクジラを捕ることできません。
アメリカはどんな手を使って、日本を陥れようとしています。フランスの方々に真相をお話ししますね。

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