2009年5月21日

フランスから見えるアメリカは浅はかな国


Versailles, France
フランスではアメリカを悪者にすればOK」では、フランスはアメリカを浅はかな国だと見ていると書きましたがこのエントリでは、どんなところが浅はかに見えるのか紹介しようと思います。未来のことを考える際に、よりたくさん考えたからといってより正しい解答を見つけられるとは限らないので、アメリカの多少浅はかな行動力は、羨望の対象となったりするのも同エントリで書いた通りです。思慮の足りない青年の行動力/実力に対する老人の感情という感じでしょうか。

まずはイラク戦争での対応からです。テロリズムに対して戦争よる殲滅を急ぐアメリカに対し、フランスはその戦争がより深い次元での対立を引き起こす危険を懸念していました。つまりは対立の構図が欧米対イスラムと変化することに対する懸念です。詳しくは「正論を主張する国「イラク戦争に反対したフランス」」に書きましたが、”フランスには、過去2回もヨーロッパ大陸で起こった大戦と、植民地支配が失敗に終わった経験から、戦争による被害と、民族と宗教の対立の根の深さを学んだという自負があった”というワケです。

次に民族間の平等に関する問題です。アメリカでは民族間の平等を達成するために、アファーマティブ・アクション(肯定的措置)を実施しています。つまり、アジア人は試験の点が良すぎるので50点引きますとか、黒人の平均点は低いので100点プラスしますとかやっているわけです。民族別の平等を達成するための措置としては最も手っ取り早いですが、長い目で見るとこの措置自体が差別を助長してしまう問題点があります。対するフランスは、なんと民族別統計を取ることを禁止しています。なので、民族別に肯定的措置をとることは出来ません。民族別統計を禁止することは、長い目で見ると民族の違いを完全に統合する共和国、憲法前文第一条に書かれている”分割し得ない共和国”のために必要なことだと考えられています。

Constitution de la République française
(フランス共和国憲法 前文第一条)

La France est une République indivisible, laïque, démocratique et sociale. Elle assure l’égalité devant la loi de tous les citoyens sans distinction d’origine, de race ou de religion.
フランスは、非宗教的、民主的、社会的な、分割し得ない共和国である。フランスは、生まれ、人種、宗教の区別なしに、すべての市民に対して法の下での平等を保障する。
最近は、アメリカ/イギリス型システムをフランスに取り入れることを公約としたサルコジ大統領によって、民族別統計にについて多少の変更も提案されています→民族別統計禁止のフランスが変わる。変更するにせよ上記の憲法前文第一条は、絶対的な基準となることは当然でフランスは突然アメリカのようになったりはしないでしょう。

3つ目として、フランス人はアメリカ型の市場経済自由主義は長い目で見ると人間を幸せにしないと見ています。エネルギー資源、人的資源、労働時間など有限な資源を活用して無限の成長を目指すことの無理さを実感しています。近代のフランスは、グローバルに展開される競争が人間を不幸にしていると考え、ブレーキをかける方向を模索しているように見えます→競争の抑制によるソシアリスムの実現。フランスから見ると、未だに短期的利益を追求する市場経済自由主義を信奉するアメリカが短絡的な人々にみえます。

フランスから見るとアメリカは短絡的、浅はか、単視眼的に見えると書いてきましたが、積極的に行動する国をまぶしく羨ましく思う気持ちもあります。1)テロリズムを武力で叩いたアメリカに対し、何もしなかったフランス。2)民族格差を是正するために積極的に動いているアメリカと何もしないフランス。フランスでは民族間格差が世代を超えて固定化しているという批判もあります(統計は禁止されているので数字では見えませんが)。問題があると自覚するからこそ大統領が民族別統計を提案しているのでしょう。3)フランスはグローバルな競争のプレイヤーを演じながら、グローバルな競争にブレーキをかけようとする行為が、自国の経済競争力を削いでいることを自覚しています。

どのトピックについてもフランスはアメリカよりも遠くの未来を見据えているんだと自負しながらも、アメリカの行動力を羨ましく思います。この心情も「フランス=老人、アメリカ=青年」の擬人化が分かりやすいと思います。フランスはアメリカの方向性を間違っていると批判しながらも、アメリカの行動が新しい概念を生む可能性を捨てていません。むしろ期待していると言えるかもしれません。日本で英語からの翻訳のニュースを見ていると、アメリカに批判的なフランスは、自分だけが正しいと思い上がっているように見えたりしますが、答えが無い問題に対するアプローチの違いだと言うことが出来ます。

2 comments:

Celine さんのコメント...

Sophieさんの切り口は非常に分かり易くフランス社会を分析されていて聡明さを感じます。文系の切り口ってドロドロしちゃって、本当は分かることを分からなくしてしまっているような感じもしなくはないですから・・・。感情とか情念とかいろいろかかわってくるからそれも面白いと言えば面白いのですが、たまに疲労してしまいます。(年齢のせいと言わないで。。。)では、また素敵な記事の更新を楽しみにしています。

Madeleine Sophie さんのコメント...

Celineさん、

聡明さ...ありがとうございます。難しい言い回しの裏にあることを読み取ったりする読み方も面白いんですけどね。このブログでは分かりやすさを重視して書いてるつもりです。そのためにある程度の例外は除外しているように感じています。たまに切りすぎちゃってる時もあると思いますが、そのときはぜひ指摘してくださいね。これからもよろしくお願いします。

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