2009年3月7日

競争の抑制によるソシアリスムの実現


Tande, France
Socialisme(ソシアリスム)とはフランス語で社会主義のことですが、日本では社会主義というと共産主義など余計な意味合いが入るのであえてフランス語のタイトルにしました。Socialeはフランス憲法前文の第一条にも「フランスは、非宗教的(laïque)、民主的(démocratique)、社会的な(sociale)、分割し得ない共和国である」と高々にうたわれている重要単語で単語から感じるイメージはかなり良好です。1年10ヶ月前にフランスについて初めの日に感じたタイトルのような妄想が、未だに薄まらないので書いてみる事にします。

むしろ、今ではこの方向性が30年ー50年のスパンでフランスが目指している方向性のような気がしてきています。まず、僕が渡仏したのはサルコジ大統領が誕生した3日後のことです。経済危機の前ですので、世の中は自由主義的な風潮の勢いが強く、「もっと働き、もっと稼ごう (travailler plus pour gagner plus)」と主張したサルコジ大統領の勝利を後押ししていました。

渡仏したときの話題は、もちろん大統領選挙の話が多くなりますが、敗退したロワイヤル候補も46.94%の得票をしていたので、彼女を支持する人もいました。だれも誰に投票したかは言いませんでしたが、主張を聞いていればすぐに分かります。いわく「エネルギー資源、人的資源、労働時間、人的資源などは有限なので競争原理だけでは限界がある。グローバルな競争がエスカレートすれば、法整備の不十分な途上国はフランスの労働基準では認められない未成年の過剰な労働などを通じて、競争を仕掛けてくるだろう。こういった過剰な競争を抑制するフレームワークを各国との協調で作る事が必要だ」と言っていました。

競争原理だけでは限界がある(コンビニの例)

一つ目の太字、競争のエスカレートによって限界ある資源を浪費している例は、無数にありますがその一つが日本のコンビニだと思います。言うまでも無くコンビニは便利で、交差点に一軒のコンビニがあれば利用者の利益になります。ある交差点で2つのコンビニが競争していれば、交差点にコンビニが1軒ある場合よりも利用者はさらに便利になります。利用者は2店舗の競争によりより良いサービスが受けられる可能性や、道を渡らずに近いコンビニを利用できる利点があります。

しかしコンビニが2店舗近くにあることは利点しかないのでしょうか。2店舗のコンビニには多くの資源が投入されています。消費電力、商品の輸送コストと生産コストは有限な地球資源を消費しています。店舗や輸送に働く人は深夜も働き続けます。人材は有限で彼ら一人ひとりの活力や労働時間は有限です。高校生が働いている場合には、彼らが享受できるはずだった家族団らんの時間や、彼らと日本の将来へのための投資としての勉強時間を消耗して経済的利益を追求することになります。コンビニの例では、他店が24時間営業で安価な労働力を活用する"効率的な"方法を採用すれば、ライバルは追従するしかありません。追従しなければ、経済的に敗北を喫することになります。このように競争が激化した社会では、ライバルに対抗するためだけに、より"効率的な"方法を採用する必要が生じてきます。

仮に、この競争が抑制できたらどうなるでしょうか。例えば、非現実的ですが2店舗のコンビには交互に一日おきに営業を続けることにします。そうすれば、投入されるエネルギー資源、人的資源、労働時間は半分になります。交差点の遠い方のコンビニに行かなければならない利用者は少し利便性が下がりますが、不便というほどでもありません。また、交差点にある2店舗のうち1店舗しか開店していなければ、利用者を争わなくなるので、一日あたりの売り上げは約2倍になります。両店舗は半分の資源の投入で毎日競争しあっていたときと同じ利益を得ることができます。つまり、無駄な競争を抑制すれば、利便性を下げること無く資源の消耗を抑えることが出来るという言い方も出来ます。

各国の協調で競争的要素を排除

二つ目の太字では、未成年の過剰な労働を槍玉に挙げるところが、うまい説得方法だと思います。上の過剰な競争がもたらす弊害を、誰もが反論しがたい社会悪を指摘することで気づかせるやり方です。実際僕は、このフレーズを聞いて過剰な競争の弊害を痛烈に認識した気がします。

と、ここまでで、違う国には違う思想があるんだな、ということがよく感じたのですが、最後の競争抑制のフレームワークを各国との協調で作るあたりは、フランスの持ち味が出てると思います。通常は、競争は必ずエスカレートする方向に進み、競争を抑制すれば一方的に競争に敗退します。コンビニの例では競争の抑制でライバル店に負け、フランス一国が競争を抑制すれば、フランスだけが貧しくなってしまいます。各国の協調を現実的に進めることが出来る可能性があるのは、今のところフランスかなと思います。未成年の過剰労働などを通じて不当な搾取によって作られた製品をEU27カ国の市場から閉め出したりすることが、可能になるかもしれません。

不当な水準の労働による製品を市場から閉め出すことは今は実現していませんが、近い活動にフェアトレードの考え方があります。途上国の製品を不当に買い叩かないという慈善的な意味合いを持つ活動ですが、労働に対して正当な値段を付けるというフェアトレードの考え方は、不当な労働に対しては許容しないという考え方に移行するかもしれません。日本の企業でサービス残業が当たり前のところなどは、不当労働としてEU市場から排除される日が来るかもしれないという妄想も可能です。今は妄想でも、世界の風潮がそういった方向に流れていくことはあり得ないとは言い切れない気がしています。

6 comments:

けい さんのコメント...

 最近、米国では銀行と自動車ビックスリーの国有化、バイアメリカというブロック経済化へと進んでいます。
 米国はいつから社会主義になったのかと驚いています。
 1989年の天安門事件、1991年のソビエト連邦解体を経て、社会主義という対抗勢力が弱まりました。
 この10年間は新自由主義こそが正しいとばかりに、「自由化」「規制緩和」「小さな政府」が合言葉でした。経済格差は広がるばかりで貧富の差は歴然、日本では勝ち組、負け組みという言葉が生まれるしまつです。
 ところが、2008年のリーマンブラザーズの破綻で、新自由主義の暴走が誰の目にも明らかになりました。
 08年8月8日北京オリンピックの日にロシアがグルジアに侵攻することで、アメリカに資金と打つ手がないことを世界に示しました。
 100年に一度の経済危機といわれていますが、進む方向も見失った状態です。
 これから、世界は多極化に向かうのでしょう。
 そんななかで、この「競争の抑制によるソシアリスム」と前回の「右派と左派はバランスの問題」のブログは正に今の時代に沿った話題だと、楽しく拝見させていただきました。

Madeleine Sophie さんのコメント...

米国の場合は自由主義の揺り戻しとして、一時しのぎとしての社会主義が台頭しているような気がします。一方のフランスでは、世界中で自由主義が最も華々しかった2007年にもあれだけの、社会主義への理解があった点で深く社会主義の洞察を行っているように感じています。これからもぜひ見ていってくださいね。

匿名 さんのコメント...

フランスは、社会民主主義的な色合いが濃い国ですね。日本人は民主主義というとこれまでのアメリカに類似した自由民主主義を思い浮かべるのがほとんどだと思います。今の世界情勢にあって、フランスの社会民主主義とはどういうものか知ることはとても有用なことだと思います。交差点にコンビニが複数あるのは日本でよくある光景なのでわかりやすいたとえだと思いました。またフランスの政治を紹介する記事を楽しみにしています。

Madeleine Sophie さんのコメント...

フランスの政治は日本の政治にも本当に参考になりますよね。日本では無い部分が主流になりつつあることを感じます。このトピックはどんどん紹介していきたいと思っているので、ぜひ見ていってくださいね。

渡邊暁之 さんのコメント...

長労働時間で生産性の低い日本企業はフランスを見習うべきだと思います。生活構造が人生を決めてしまう。本来人間にとって目指すべき方向とはこのことだと考えさせれます。
ベーシックインカムといいこれから人類は余裕をもった生活構造を実現すべき時代に差し掛かっていると思います。物質的な豊かさは満たされ、高い精神性を持つことが尊ばれる時代になるでしょう。

Madeleine Sophie さんのコメント...

渡邊暁之さん、
そうですね。将来的には日本も変わっていった方が良いでしょうね。日本の取るべき戦略を提案してみましたのでぜひ見ていってください。

フランスの日々: 怠け者同盟の社会と働き者の社会の間の競争の中の日本

ベーシックインカム論は関連させて書きたいと思っていたところなんですよね。これも怠け者同盟の社会と一緒で「他国への波及なき怠け者モデルは机上の空論」と言えると思います。

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