2009年2月10日

右派と左派はバランスの問題


Paris, France
よく読んでいるブログで経済政策についての論戦が展開されていました→「雇用流動化で失業率は下がる - 池田信夫 blog」。経済学の教授と、大学講師兼弁護士の先生方の論戦なので、経済政策について僕が口を出すのもあれなのですが、「左派と右派の意見が近いフランス人の政治議論」のエントリで伝えたかったことが、よくわかる例だと思うので、少しコメントしてみたいと思います。

まず、池田氏が自由主義派(右派)で、労働者の解雇規制が経済成長を阻害していると批判しています。
雇用流動化で失業率は下がる - 池田信夫 blog
かりに資本家から搾取して労働者に再分配しても、パイ全体の大きさは変わらない(税の累進性を上げると、イン センティブの低下でGDPは下がる)。今の日本のように年率10%で経済が収縮してゆく経済で、所得分配ばかり争うのはnegative-sum gameにしかならない。雇用流動化によってGDPを高めれば、ほとんどの人々が得するpositive-sum gameになるのである。
次に、小倉氏が平等主義(左派)で企業や高額所得者から、中低所得者へ所得を分配するべきだと述べています。
la_causette: 「新しい産業を育てて投資機会を増やし、内需拡大する」ために必要なこと
従って,内需を図るためには,消費性向の低い企業や高額所得者から消費性向の高い中低所得者への財貨の移転を図ることが急務であり,それは所得税の累進性 を引き上げたり,資産課税を強化したりして,公的部門が吸い上げた財貨を,失業者や低所得者向けの公営住宅への投資や中高等教育の無償化,失業給付の期間 延長等の形で中低所得者へ配分したり,解雇規制や労働組合の保護等によって一般労働者の所得水準を維持し上昇させていくことが必要となります。
利点だけしかない政策というのは、ほとんどないのでどちらの政策にも問題点はあります。例えば最初に100人の村に100の所得があったとして、自由主義にのっとり、上位10人が11の所得を得たとして、全体のパイは110と増えましたが、これではモノが売れません。10個のロールスロイスが売れるだけで、他の90人は消費行動が出来ません。全員がお金を持っていれば、100台のトヨタが売れたはずなのに、全体の所得のパイが増えようが、人は複数の自動車を同時に使えないので売れる台数は少なくなります。逆に平等主義にのっとり、全ての村人が1の所得を得ることを考えると平等すぎて、働くインセンティブがありません。全員がさぼり出してパイが小さくなります。池田氏の言う、negative-sum gameとなります。

つまり、経済政策は、村人上位が全の富を独占する極端(右)と、村人全員が平等に富を分配する極端(左)の間にバランスよく収まることを目的としていると言えます。上の二方の意見は、現状がどちらに偏っていると見るか、時と場合によって正解が違うバランスの問題です。お二方は専門家なので、どちらの政策の利点も問題点も熟知しているのでしょうが、「彼は何をいわれても「階級闘争史観」を変える気はないようなので議論は不毛だが池田氏)」、「〜「北風」政策を推進されるというのは不思議でなりません小倉氏)」など、どちらの意見の書き方も、相手の言い分を聞かない一方的な印象を持ちました。こういった断言がこれらのブログの人気の秘密なのかもしれませんが。

左派と右派の意見が近いフランス人の政治議論」のエントリでも述べたとおり、フランス人がこの話題について議論する際は、たぶんどちらの側も完全な政策は存在しないことを念頭に議論するような気がします。自説の利点を主張し、相手の意見の問題点を指摘するだけでなく、相手の説の利点と自説の問題点も比べて議論するような気がするのです。対立説の利点も認めず、自説の優位性だけを説けば、もしかしてある説を主張している方が、対立する説の利点をまったく認識していないのか、読者が不安になるのではないかと思います。

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2 comments:

花園 祐 さんのコメント...

 私が議論している最中に突然、「で、今君が考える、この議論での論点はどこ?」と聞くと、びっくりしたように何も言えなくなる人が、日本人には異様に多いように思えます。わかる人なんかはこう聞いてもすぐに論点を挙げられるのですが、大半の人は自分と相手の主張でどこが食い違っているのか、何を言い争っているのかと言う論点を意識しないで、Sophieさんの言う通りに自説の優位性だけをオウムのように繰り返す人ばかりなのかもしれませんね。

 この記事で紹介されている論争も、どんな社会を目指すのかという根本的なビジョンからして違っていて、まずはその辺から話すべきなんじゃないかという印象を持ちます。

Madeleine Sophie さんのコメント...

論点を言えないということは、議論していることにならないですよね。。議論での論点を突然問われて、簡潔にポイントを説明出来る人は、なかなか賢いと思いますが。

どんな意見にも一分の里があるので、それを認めることから、議論が始まるような気がしますね。その利点は理解したけど、自説にはそれを上回る利点があるとか、問題がより少ないとか。逆に一分の里もないような意見はブログに書く必要すらないわけですから。

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