2009年2月5日

フランス人の政策議論はアラカルト方式


Tande, France
アラカルトとはフランス語で"à la carte"といって、レストランがあらかじめ決めた定食の組み合わせではなく、メニューから自分で直接選ぶ方式のことです。フランス人の政治議論を聞いていると、よく思うことはフランス人は議論の始めに右派と左派の陣営にも立っていないということです。もちろんかれらの心の中ではどちらかに属しているのですが、政策の議論をしていてもそれが前面に出てきません。言葉や思考の上では、中立の立場でいるという姿勢を崩しません。

しかも、各陣営が抱える政策論に拘泥せず、自分が良いと思う政策を擁護していきます。結果、一人の個人の支持する政策は右派と左派のどちらの政策も入り交じったものになります。例えば、日本では、左派といえば、「死刑廃止、憲法九条擁護、自衛隊反対、核兵器保有反対、天皇制改正、労働問題」がセットになっている空気があります。実際には、例えば、自衛隊反対、核兵器保有賛成といった組み合わせも論理的には可能なはずです。フランス人はこれを地でいきます。

例えば、「左派と右派の意見が近いフランス人の政治議論」で例に出した、ストライキ問題とスカーフ問題をもう一度例にとります。ストライキ問題ではストライキ賛成派が国家や資本家に対する抵抗という視点から左派的な主張になり、反対派が権力の増大を容認する右派的な主張になります。また、スカーフ問題では、スカーフ着用禁止が国家権力の介入を容認する点で右派的な主張になり、スカーフ禁止に反対する方が左派的な主張になるはずです。しかし、実際にはスカーフ禁止に反対するイスラム教の人が、スカーフ問題では左派だったにもかかわらず、ストライキには否定的な右派的な見方をしていました。

これがこのエントリの冒頭で述べた、個人が右派、左派のどちらの陣営に属しているかが分かりにくい理由です。特定の議題で左派的な主張をしていたからといって左派とは限りません。日本では左派の人からは左寄りの主張が聞け、右派からは右寄りの意見が聞けますが、フランスではその逆です。政策に右左の色がついていて、その様々な政策をアラカルト方式で選んでいった結果、その政策群の傾向が右派、左派のどちらかに寄っているというだけなのです。人によって、支持する政策が議題によってバラバラなので、ある人物を右寄り左寄りと区別する意味がないぐらいに感じます。

最後に少し感じる傾向としては、フランス人は最初に提示された意見について、その次に発言する人は違う意見を提示することが多いのではないかということです。議論を楽しむためなのか、反論を口にしないとすまないひねくれ者というか、とにかく人と違う意見を言って議論する傾向があるように思います。個別の議論について、その意義と問題点の両方を理解しているからこそ、その時々によってどちらの意見にも論陣を張れるフランス人ならではのバランス感覚である気がします。もちろん、最後のフランス人ひねくれ者論は少し冗談が入っていてます。ひねくれて反論していると思っているのは僕の思い込みで、実際は反論のある人が次に発言しているだけかもしれません。それでも、政策の利点と問題点を理解しているフランス人ならば、いつでも対立意見を述べることが可能なはずだと思ってしまうのです。

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2 comments:

花園 祐 さんのコメント...

 自分の友人がまさにSophieさんが最後に言っているような人間で、議論を面白くするために本来私の意見に賛成のところ、敢えて反対に回って議論を深めてくれる友人がいます。やっぱり私としてもそういう風に意見を比較、対立させる議論の方が面白く中身も非常に充実するので、フランス人も意図的に議論で相手の意見に反論しているんじゃないかと思います。

Madeleine Sophie さんのコメント...

世の中の議論には絶対に正しい政策も、絶対に間違っている政策もないですからね。評判の悪い消費税増税なども、一理あるわけですよね。どちらかの意見に強力に賛成している状態というのは、その問題性を認識していないだけかもしれませんよね。僕も実は、絶対に正しい政策とか聞くと反論したくなるたちなんですけどね。

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