2009年1月10日

[書評] アメリカの大学院で成功する方法―留学準備から就職まで

アメリカの大学院で成功する方法―留学準備から就職まで (中公新書)
アメリカの大学院に留学して、乗り越えなければならない障害と対策があらかじめ書かれています。大学の選び方、願書の書き方、授業の乗り切り方、論文の書き方、履歴書の書き方、果ては就職の仕方、大学でのキャリアの作り方まで満載されているガイドでした。一つ一つは小さな指摘なのですが、知らないと結構苦労することも多そうなので、アメリカに留学する人は読んでおいた方がいいと思います。フランスに留学する人も8割以上は役に立つことだと思いました。

僕は留学が失敗する危険が一番大きいと思うのは、自分の能力に悲観的になったり、未来の見通しに絶望的になったりすることだと思います。本書では、間違った認識によって、こういった罠にかからないように、あらかじめ指摘してくれています。最初は、みんな自分の能力に悲観的になったりするんだということを、教えてくれるので、精神衛生によいと思います。
ディスカッションについていけなくて小さくなっていた頃は、話の内容がわからないのは自分が馬鹿でみんなが賢いからだ、と思い込んで、授業のたびに落ち込んでいた。...(略)...、実際はセミナーという独特の状況を構成している要素は、他にもさまざまあるのだ。精神衛生のためにも、それを理解しておくとよい。(P. 72, 73)
授業で発言できないプレッシャーや、わからないのは自分だけじゃないのかという疑心暗鬼はよくわかります。でも日本での授業を思い返せば、母国語でもすべて理解できている訳ではないんですよね。余計なプレッシャーは感じる必要がないということは同意です。

また、自分の現状の課題は博士論文なので、以下のように書かれていると、気が休まる気がします。これから、絶望的になったり、悲観的になったりしたときには思い出そうと思います。
目標を高くもつのは大事なことだが、自分に課する基準が高すぎて、自分が今までに読んできたすぐれた論文や研究書と同レベルのもの、自分で「これは完璧」と思えるものが書けるまでコンピューターに向かって格闘していたのでは、博士論文は終えられない。あなたがこれまでに読んできた本や論文というのは、あなたが今しているような勉強を、あなたの何倍のも年数をかけてやってきた第一線の研究者によって書かれたものである。(p. 124)
最後に、あとがきに見たことのある名前がありました。
アメリカの大学院生活を送る中で、私が心の支えにした一冊の本がある。水村美苗さんの『私小説 from left to right』である。陰鬱なニューイングランドの冬や先の見えない大学院生活からくる閉塞感に始まって、日本人としてアメリカで生きることをめぐる孤独、ふるさとである日本に感じる違和感、外国語を使って生活する中で鋭敏になる言葉に対する思い入れなど、私が抱いていた思いをすべて文字にしてくれた、わたしにとってはまさにバイブルのような本である。(p.244)
水村美苗さんって聞いたことあるな、と思ったら、最近たくさんのブログで話題になっていた『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』を書いた方でした。どちらも読んだことはありませんが、アメリカで生活する日本人が抱く思いが、フランスで生活する日本人と共通するものもあるかも知れません。どちらも読んでみたくなりました。
アメリカの大学院で成功する方法―留学準備から就職まで (中公新書)
吉原 真里 (著)
第1章 留学を決めるまで
第2章 スタートラインに立つまで
第3章 泣いている間もないコース・ワーク
第4章 地獄の試験勉強
第5章 いよいよ研究論文
第6章 まるで本職ティーチング・アシスタント
第7章 「自分の勉強」以外にあなたがするべきこと
第8章 不安がいっぱい就職活動
第9章 アメリカの大学で生き延びるために
アメリカの大学院に留学を考えている読者に、本書は具体的な情報とアドバイスを提供する。アメリカの大学院はどんなところで、学生には何が期待されている のか。日本の大学院とは異なるアメリカの大学院の仕組みをふまえ、「プロ養成機関」としての大学院を最大限に活用するための手段と心構えを説く。ブラウン 大学に学び、ハワイ大学に職を得た著者による、実践的・現実的な留学成功のためのガイダンス。

6 comments:

花園 祐 さんのコメント...

 私なんかは語学留学でしたが、きちんと現地で高度な学問を学ぼうと言うのならやっぱり大変でしょうね。知り合いのチリ人の女の子なんて日本語が全然出来ないにもかかわらず日本の大学に入って、毎日泣きながら勉強していたと言っていました。

 前に留学は成功するかどうかよりもやるかやらないかだ、という具合でもっと積極的に日本の学生は考えるべきと私もコメントに書きましたが、かといって全く準備もしないというのはこれもまた問題でしょうね。

Madeleine Sophie さんのコメント...

勉強で現地の学生と同レベルの達成度を目指すには、いろいろと大変だと思います。Amazonの批評で、打算的なノウハウ本という指摘もありましたが、先人の知恵やアドバイスはありがたいものだと思いますね。先人の得た知識を知らずにつまずくにはもったいないと感じます。

サカタ さんのコメント...

 海外留学ですか。いいなと思う反面、行ってどうするっていう疑問もあったりですね。確かに、海外に行くことによって視野は確実に広がるでしょうが、視野を広げすぎても内容が薄くなるのではと思うんです。日本にいても、少しは情報が入ってきますしね。最近では、英語の必要性が叫ばれていて、そのための準備というのもあるのでしょうが。にしては事前の準備やリスクが大きいし。
 うーん、でも海外には滞在してみたいですね。旅行という短期間では得られないものがありますしね。
  
 まあ、早い話、行く気のあるやつは行って来い、行く気がないなら行くなって事ですよね。

Madeleine Sophie さんのコメント...

留学はすべての学生に勧められるものではないと思います。物事の違う見方や、考え方が身につく利点がある反面、海外で暮らすのにかかるオーバーヘッドや、日本でうまくいっていた方法がうまくいかなくなるリスクもあります。

個人的には日本で飛び抜けて業績を出している研究者などは、あえて留学しないほうがいいのではないかと考えています。時折訪れる海外生活のわずらわしい問題に悩む時間がもったいないので。

サカタ さんのコメント...

 大学の大学院を出て、海外の大学へ行くって言うのは、一般化していることなのですか?  実は、ソフィーさんの卒業した大学院を出て今僕の大学の教授になっている人がいます(非常勤かも)。その人は、大学を出た後海外の訪問研究員になっているんです。そして、その後に教授になったみたいです。どうなんですかね?

Madeleine Sophie さんのコメント...

人それぞれですが、博士をとった後、大学の教授になる前に海外に行くのは一般的だと思いますよ。いわゆるポストドクターというやつです。教授になるための見習いで海外でいろいろな経験をつむようです。

修士課程、博士課程で海外に出るのはそれと比べると一般的ではないかもしれません。ブログに書いているとおり試してみる価値はあるとは思います。

コメントを投稿