2009年1月6日

一時帰国中の雑感「矢島美容室」 (2/2)


Kyoto, Japan
一時帰国中の雑感「矢島美容室」 (1/2)では、片言の外人を笑うという、お笑いの矢島美容室で感じた違和感を書きました。忘年会のカラオケでも友人が歌っていて、なかなかのりのいい曲だと感じています。このネタを笑い飛ばせないのは、日本では少し硬すぎる考え方なのでしょうか。VISAが無くて国外に追い出される悲劇や、片言外人の立場を身近に感じることも無く、それらを無邪気に笑うことができるのが現在の日本なのでしょう。

僕が感じた違和感の原因の一つはフランスにおいては僕自身が片言外人ということもあり、日本にいる片言外人の立場を分かってしまうからでしょう。僕自身は片言でもフランス語をしゃべるだけで、立派なものだと開き直って片言でしゃべってますが、片言のフランス語を恥ずかしがったりと、開き直れない人がいるのも知っています。

多くの日本人はそういった立場に無知で無邪気に片言外人とVISAやパスポートを笑いのネタにしているのだと感じています。しかし、少し考えを進めると、ちょっとした不快感の理由はもうひとつ考えられます。それは、日本人が自分の不安や、自信のなさ、劣等感といった感情を、他人を貶めることで満たそうとしているんではないかということです。正しい日本語をしゃべり、VISA切れを心配することもなく、日本に滞在でき、日本国パスポートを持つ自分は、彼らよりはましだという風な感情が混ざっていないかが心配になるのです。もちろん、それが杞憂であることを心の底から願います。

つらい労働を将来の保証もなくさせられて、仕事に誇りも持てず、社会に打ちのめされた人たちが、自分より下の立場を見て喜ぶ姿を見るのつらいと感じます。片言外人を笑うことでしか、自分の立場を安心できなかったり、日本人であることだけでしか自分に誇りを持てない人が出てきているのではないかと心配になります。

とはいえ、社会に打ちのめされた人たち、とりわけ失業者などが移民を排斥したり、貶めたりすることは、日本だけの現象ではありません。フランスでは2002年の大統領選挙で極右のルペンが決選投票に進んだりする事態になりました。どこの社会でも下を見て満足する負のエネルギーが蓄積する可能性はあります。だからこそ、その流れを敏感に感じて自覚する必要があるかもしれません。今回は、久しぶりに帰国し、多少なりともそういった傾向を感じたものが、それを書き表すことにも意味があるのではないかと、お笑いから気づいたこととして、つづってみました。自分の中にそういった負の感情が無かったかどうか確認してみるのもよいと思います。(正直このエントリーは僕の考え過ぎであってほしいです。)

関連: 一時帰国中の雑感「矢島美容室」 (1/2)

7 comments:

kuku さんのコメント...

んー正直微妙な記事だと思いました。矢島のメインターゲットは社会人というより学生、それも中高生あたりでしょうから、ワープア問題と直結させて語るべきかどうか。それに、この手の仮装モノはときどき思い出したように流行りますし、流行らないレベルのネタなら何十年も連綿と続いているんでしょうし。

それと、片言外人の立場から発言するのは悪いことだと思いませんが、もう少し用心深くあるべきかなあ、と。「つらい労働を~心配になります」の下りは選民意識がキツすぎて辟易します。移民批判をするとこの人からはそういう目で見られてしまうのかと思いました。

また、仮にSophieさんのいうような人間が差別意識を持ちつつ矢島を笑っていたとして、それはそんなに悪いことなのかな、とも思います。暴力に訴えたり「あいつらはそうされてしかるべき」と理論武装するよりは、はるかにまともな発散方法だと思います。

最後に、ドーランの濃度やセリフ等、アダモちゃん@島崎俊郎やミスター・ベーター@松本人志よりはマシになってきてると思うので、自分はむしろ高評価している部分もあります。フランスに比べまだまだかもしれませんが、正直そのフランスもまだまだな訳で(もちろんアルジェリアその他入国する側もまだまだですが)、程度・比較の見地からの批判は難しいですね。

Madeleine Sophie さんのコメント...

kukuさん、率直なご指摘ありがとうございます。

確かにこの種のネタはずっとある気もしますね。今回特別に気がついたのは、日本と比べると左派の傾向が強いフランスから帰ってきた影響だと思います。しかし、中高生を対象とした笑いならばワーキングプアの問題とは無関係というのは、少し疑問です。それぐらいの年代では、家族、親戚、ニュースから世の中の雰囲気を敏感に感じ取っていると思います。ワーキングプアの問題を明日は我が身と感じている若者が、移民を笑うことで安心していることが、このお笑いのヒットの原因である可能性を否定できないように思います。

インテリ左派の選民意識は鼻につくことがあるのは同感です。僕も心情的には右派傾向があると自覚しているので、よくわかります。書いていて辟易してきました、そしてこのエントリーが、その1から大幅に遅れた原因です。最終的には、日本の外の空気に触れている人間が少しでも感じた日本の空気は、発信しておくべきだという結論に達して、このエントリーを公開しました。

確かに移民に対して優越感を持ちつつ、彼らを笑い者にする行為は、世界では過去におこったような暴力や、遺伝子的な理論武装などに比べるとマシだというのは同意します。それを社会に蓄積した不満の発散方法として許容するかどうかは、議論の分かれるところかもしれませんが(案外とココが議論の鍵かも知れませんね)。

最後のパラグラフは同意します。最近は結局は人間みな平等という理想は、この世界では耳あかほども実現されていないと感じています。

匿名 さんのコメント...

初めてコメします。
あんまり深く考えなくてもいいと思います。
もちろんそういう見方もあると発信されるのは有意義なことですが、あのパロディの人気にそれほど深い意味があるとは思えません。
ただ単におもしろいから人気なだけだと思います。
じゃあなぜおもしろく感じるのか?ってことなんでしょうけど、それは十人十色で確かめようがないですから答えはでないですよね。

自分的にはこの矢島美容室は名前は知ってたけど興味がないって程度で、正直そこまで人気だったってことも知りませんでした。
それでたまたま、年末にこれのライブが放送されてたので見てみたんですが、会場には家族連れの方も多く散見して小さいお子さんなんかが手を振りながら楽しそうにパオパオしてる様子なんか見ると、ブログ主さんが言われる「ワープア」だとか「移民排斥」だとかの観点にはいささか違和感を感じました。
少なくともライブ会場に来ていた観客の皆さんからは、このユニットに対して侮蔑的な感情は見て取れませんでしたね。
とゆうか逆に上記したように微笑ましいまでの暖かさを感じました。

まぁあくまでライブを見た感想ですから、これだけで彼らの人気の源泉を語りつくせるわけではありませんが、それほど深刻な原因があるとは思えないってのが自分の率直な意見です。

初コメなのに長文失礼しました。

kuku さんのコメント...

いや、率直すぎるコメントを柔らかく、しかし正面から受けて頂いてこちらこそ感謝です。

もう格別付け加えたいこともありませんが、矢島に違和感を覚えつつ、さりとて強い批判論理も具体化せず/させず、当惑しておられるありようには共感しておりました。前回の記事の歯切れの悪さは素敵だなあと感じておりました。それだけに、本件記事でいきなり(自分にとってはイヤな方向で)Sophieさんが固まってしまったように思えて、前回のコメントをぶつけてしまいました。

最後に、些細な点かも知れませんが当方は「ワーキングプアの問題とは無関係」とは述べておりません。例えば矢島のヒットの理由を10列挙して、その3-5番手あたりにワープア問題が来ている様な文章ならケチつけどころか納得です。理由を1つだけ挙げ、その1つがワープアであるからこそコメントをぶつけたくなった訳でした。

Madeleine Sophie さんのコメント...

初コメントありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

確かにこのエントリーは少し考え過ぎですかね。忘年会で友人がこの歌をノリよく歌っている様子からも侮蔑的な雰囲気は全く感じませんでした。日本人は日本人自身を笑ったりするのにも抵抗がないので、それ以外のいろいろな者を笑っても問題ないのかもしれませんね。

彼らの面白さは、外から見た日本を歌っているところにあるのかもしれませんが、僕自身はちょっと違和感を感じましたね。こういったコメントを聞けたことで、ちょっとした違和感を発信しておいてよかったと思います。

Madeleine Sophie さんのコメント...

kukuさん、

日本に帰って来たあと、矢島美容室を見たときの違和感をエントリーを書こうと決めたのですが、違和感を感じる→なんでだろう?→片言のモノマネが面白い?→なんか弱い者いじめな感じがする、と移ってきました。弱い者いじめが心地よく響くのならば、相当自信を喪失しているのではないかと心配になってきたのです。

考えていくうちにこれが左派の人たちの言うことなのかなと、初めて左派的なエントリーを公開してみたのです。はやり常に考えていることではなかったために、論がつたなかったようですね。このエントリーに関しては、その2の方は嫌な予感を表明してみただけのことで、根拠はそんなにないのです。コメントありがとうございました。

匿名 さんのコメント...

古い記事へのコメントで申し訳ないです。島国としての日本の特徴について調べている内に、こちらにきました。
矢島美容室の面白さについてですけど、私はこのネタに励まされた想いがしたんですよね。
この矢島美容室は、パッと見の華やかさとは違うストーリーがあって、そこがチャップリン的なユーモアとなっていると思うんです。
矢島美容室の設定は、アメリカでも田舎の、のどかな地域から、母子家庭の黒人の親子が、日本にエンターテイメントビジネスで一旗あげようとしてきた、というものです。もちろん、日本語も話せない無謀さで。
だから、日本人から見ても、設定から、3人の弱者的な感じが受け取れます。
ところが、この3人は、決して自分たちの境遇に負けていない。TV局の偉い人たちにも堂々としているし、かえって強気な態度で日本人を困らせたりして、でも、歩が悪くなると、急にしおらしく、女性らしくなったりする強かさも見せてくれます。
また、とんねるずは男の人ですが、女装で、それなりにキレイ(特に木梨さん)。男でも気合で結構キレイに見えるんだ、私も頑張んないと・・とも思います。
つまり、矢島美容室からは、皆結構色々それぞれ足りない部分やコンプレックスを持っていたり、世の中も不景気だったりしますが、そういう気持ちに負けずに、強気に、強かに、元気に生きましょうよっていうメッセージを受け取ることができるのです。
これが、真面目に日本に留学にきている外国人男性の設定だとしたら、まったくお話になってこないのです。なぜ、真面目に勉強しようとしている人をバカにするのか?ということになります。
今現在はもう解決済みのお話とは思いますが、一部片言外人として笑う人もいるのかもしれないですけど、私のような考え方で矢島美容室を見ている人も結構いると思いますので、お話してみました。

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