2008年11月23日

未来の新秩序を作るフランス、追従する日本


Paris, France
フランスはつくづく左派が強い国だと感じます。一度、フランス人に「日本人はカルロス・ゴーンのことをどう思っている?」と聞かれたときのことです。日本のビジネス雑誌にはゴーン氏の特集をやっていたり、テレビにも呼ばれたりしています(いました)。いろいろな見方はあると思いますが、一言「まあ、簡単にいうとヒーローじゃないかな」と答えました。日本でのフランス人の活躍ということで少し満足そうにしていましたが、「フランスでもそうなんじゃないの?」と聞いたら、きっぱり「あり得ない」と答えていました。曰く、「経営者と労働者(大衆)は対立しているから、ヒーローにはなれない。右の資本家に対する左の大衆の人気は得られない」と言っていました。経営者と資本家がヒーローになれない国だそうです。とはいえ、ゴーン氏は出身学校では著名な有名人の筆頭の挙げられているのを知っているので、実力は大衆にも認められているのですが。

フランスでは、右派と言えども日本のどの政党よりも左に位置していると言えます。反対にアメリカの左派も日本をはじめとする多くの国より右側に位置しています。左派=平等右派=自由を国ごとに並べると以下のようになると思います。
平等←フランス左、フランス右、日本左、日本右、アメリカ左、アメリカ右 →自由
そもそもフランスは、ブルジョワが通商の自由を求め、最初に市民革命を起こした国です。それまで、全ての権限を握っていた国王を始めとして、多くの貴族の首を飛ばしました。これまでの秩序と常識を吹き飛ばす、国民の発狂状態から新しい体制を築いてきました。それまで、最も教養深い国王が国の指針を決めていた体制から、市民の中で一番教養深いと思われている人が選ばれ、国の進路を決めることになりました。この情勢では王権側が右翼で、自由を求める勢力が左派だったので、この頃からフランスでは当時世界で一番、左派的(革新的)な勢力が強かったことが分かります。

時代は下り、現在は行き過ぎた自由を制限する平等が左派の思想になっても、フランスは左派の先鋒を務めています。フランスでは日曜日には原則として店が開いていません。また、24時間営業の店もありません。これは、日曜日の営業が許可制になっているためで、一番の繁華街、シャンゼリーゼ通りの店も日曜日の営業許可は持っておらず、日曜日は閉まります。資本家が大衆の資源(時間、体力、気力)を吸い取りながら、ひたすら利益を挙げる商業主義的、自由主義的な風潮は抑制されています。

思えば、自由という概念を最初に導入したフランスは、すでに先頭を切って自由の抑制(=平等)の段階に入っていると言えます。行き過ぎた自由資本主義の弊害を最初に打破するのは、市民革命を最初に成し遂げたように、またもやフランスになるのではないかと思います。少なくとも、日本よりもその可能性に近いと考えます。それは、日本の左派政党の能力が劣るといった実際的な物ではなく、フランス人と日本人が持つ1)考え方の違いと2)立場の違いだと思います。

まず第一に考え方の違いとして、フランス人は不当だと感じ、我に論理がある時には必ず主張します。例えばワーキングプアの問題があったら、どんなに小さいことでも、デモ、ストライキといった手段に出るために自身の論理を固め、仲間を集めます。逆に日本だと、どんなにつらくともみんな同じ状況で文句を言わずにがんばっているから、その状況で上手くやる方法を考えます。これには、理屈ばっかり言って不平を言い続けているフランス人と、多少の問題は自分でなんとかして黙々と作業を進める日本人という逆の面もあります。現状に常に不満を抱いているフランス人の方が新しい体制を作る可能性が高いと思うのです。

第二に、立場の違いがあります。資本家の横暴を抑制するという名目で、自由資本主義を制限してしまうと商業的な競争力は落ちます。毎日20時に閉まって日曜日営業しない店と、毎日24時間営業のコンビニでは、商業的利益では太刀打ちできるはずもありません。つまり、左派のいう平等(=自由の抑制)を一国で進めてしまうと、一国だけ貧しくなってしまう面があります。つまり、ここがフランスの立場が有利な面です。フランスはEU27ヶ国のリーダーを自認し、EUにおける、さまざまな政策の指導的立場にあります。また、各国にNoといわせないような論理の作り方が巧みです。対する日本は、他国に同じ方向を向かせるための手段を持っていません。フランスが、他国を巻き込みながら新しい世界の方向性を示せるのに対し、日本では一国だけ貧しくなってしまうような政策をとるのは不可能に近いと考えられます。

こう言ったことから、世界の新しい秩序を打ち立てる能力を持つのは、やはり(日本と比べると)フランスだと言わざるを得ません。対する日本は作られた秩序の中で優位な立場に立つ能力は非常に高いと思います。市民革命から始まる自由主義的な世界の中で一定の地位を築いていることを第一の証拠と出来るでしょう。過去を見えると、国民国家と徴兵制いう概念をフランスに次いで世界代2番目に導入したのは日本だそうです。日本は、フランスの作った新秩序の論理と先見性を認め、それらを導入する変わり身の早さも誇れるかも知れません。
[書評] フランス三昧
「国民国家」と「徴兵制」こそ、フランス大革命の発明であり、以後にに統一を実現した国家が採用する近代化の原理となる。なんと、世界でフランスに次いで に番目に「国民国家」を実現したのは、明治の日本であった。...(略)...日本の国民国家成立はイタリア王国、ドイツ帝国の成立に鼻の差で先んじてい る...(略)... (P.94-95)

2 comments:

花園 祐 さんのコメント...

 大分前に私のブログで書いた……か、ちょっと記憶が曖昧ですが、以前に私の友人がイギリスやフランス、そして韓国では、民主主義を名誉革命、フランス革命、学生運動で自力で獲得したという過程があったのに対して、日本は戦前に大正デモクラシーこそあったものの現代のような民主主義は戦後にアメリカによってもたらされたもので、いわば日本人は自由というものに「もらえるもの」と考えても「苦心して手に入れる、維持するもの」とは考えないのではという話を言っていました。
 その友人によると、他の一部のアジア諸国もこうしてアメリカから自由を受け取ったので、日本と同じように政治参画意識が低いらしいです。

Madeleine Sophie さんのコメント...

たしかに、一理あるかもしれないですね。どこかで聞いたことがある仮説です。僕としては、日本人の特性のもう少し深いところに、自由を独力で見つけられなかった原因があるように感じます。江戸時代は身分や特権制度があり、現在よりも自由が制限されていたと考えられますが、260年間続きましたよね。

現状に不満を抱くのはフランス人と日本人どちらも同じかも知れませんが、その構造を深く分析する度合いが違うような気がするのです。フランス人は自由を制限している原因を深く分析するのに対し、日本人は例えば自分の教養やスキルを磨いて上の階級に上がったりと言った現状打破の解決法に力を注ぐ気がしています。

ちょっと近いエントリとして「なぜフランスに留学するのか:考え方の差異」にも書いてみました。

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