2008年10月6日

[書評] BRICs 新興する大国と日本

BRICs 新興する大国と日本 (平凡社新書)成長著しいBRICsについて2006年6月に書かれた解説書です。日々成長しているBRICsについては今から2年以上前の紙媒体の情報を読むよりも、wikipediaのBRICsを読むなど、更新されている情報を読んだ方が良いと思います。とはいえ、これだけの分量まとめて体系的に書かれているものは、必要な人には多少古くとも読む価値があります。BRICsが備える成長のエンジンは次の4つだと示されています。
BRICsが備える四つの成長エンジンとはすなわち、1. 人口規模が巨大であること、2. 各種の天然資源に恵まれていること、3. 外貨の導入を推進していること、4. 購買力のある中産階級が徐々に台頭しつつあることだ。(P. 220)
BRICsについて頭に入れる必要性は、やはりアメリカに一極集中している政治/経済/軍事が多極していく過程においてそれらの国が大きな役割を演じるからだと言えます。本書では、BRICsの分析は、今後の日本の進路について考える際に必要なことと位置づけられています。しかし、今後の日本の進路について考察することは、本書の対象外となっています。
新興国の成長に伴い、米国を中心とした現在の先進国の相対的な地盤沈下は避けられないというとこだ。...(略)... 現在の日本は、政治・経済・外交・軍事など多くの面で米国に依存しているが、世界のパワーバランスの変化に伴って米国依存型の戦略をどこかで軌道修正する必要に迫られるだろう。(P. 157)
ビジネス展開上のリスクが各々以下のように書かれていました。ビジネス上の付き合いや、歴史問題も含めいろいろな問題が生じる中国ですが、他の三国(ブラジル、ロシア、インド)と比べると問題はかなり少ない方だと捉えられていることが分かります。
ビジネス展開上のリスクとして、中国では「法令・運用の不透明性」を上げる企業の割合が高い。他の三ヶ国については、「現地に関する正確な情報の不足」を挙げる企業の割合が高いが、個別のリスクとして、インドでは「インフラの未整備」、ブラジルでは「為替リスク」、ロシアでは「治安面での問題」を挙げる声が多かった。日系企業が中国以外のBRICsとの関係を深めるのはまだ先のことのようだ。(P.190)
BRICsは人口、国土、天然資源など似通っていますが、ロシアはたして新興国なのかというところは疑問です。ロシアだけ少し異質だと感じますが、ロシアもやはりBRICsというくくりで呼ばれることを好ましく思っていないそうです。ロシア人には不用意に使わないようにしようと思います。IBSACという新しい呼び方を紹介するところで、以下のような説明がありました。IBSACではロシアを抜いて、南アフリカ(South Africa)を加えた四国だそうです。
第一に、ロシアがブラジルやインド、中国と同列にBRICsと呼ばれることに強い抵抗感を示していることがある。すでに主要国首脳会議(G8)の正式メンバー、G7の準メンバーとなっているロシアには、自国は新興国グループではないというプライドがある。(P.193)
BRICs 新興する大国と日本 (平凡社新書)
門倉 貴史 (著)

第1章 なぜBRICsが注目されているのか?
第2章 台頭する中産階級
第3章 資源獲得競争
第4章 BRICsの軍事力
第5章 国際会議で影響力を増すBRICs
第6章 BRICsと日本の関係
第7章 ポストBRICsとして注目を浴びる国々

ブラジル、ロシア、インド、中国—世界がうらやむ経済成長を続けるBRICs諸国。その存在感は軍事面、国際会議でも高まっている。今後、先進国とのパ ワーバランスはどうなるのか。日本はこれらの国とどう付き合っていくべきか。ポストBRICsの有力国の、今後の動向は。豊富なデータをもとに、底知れぬ 実力と中長期的展望を徹底解説。

2 comments:

白 さんのコメント...

BRICsか……正直、今現在の状況を見るに限りなくバブリーでお花畑な世界を前提とした単語ですね。

資源頼り、外資頼り、外需頼りの国は見事にバブル崩壊してますね。

まあ大前提だったアメリカ主導の経済がこけまくってますから仕方ありませんが。

これからどうなるかは分りませんが、現時点では「BRICs」と言う単語は作られた当時の意味を失ったと思います。

「事実は小説より奇なり」という諺を実感してる今日この頃です。

Madeleine Sophie さんのコメント...

白さん、

この言葉が作られた頃とはまったく意味合いの違う言葉になりつつあるかもしれませんね。そもそも、三十年後の世界を予想するということ自体が、占いみたいなもので意味のないことかもしれませんし。本書にもありましたが、前提とする途上国の経済指標は誤差が大きいと言われていますしね。

経済ではアメリカがこけて世界の国が影響を被っていますが、大まかにいうと先進国グループに途上国グループの先頭が追いついて、どちらにしろアメリカ一極集中は崩れますよね。BRICsという単語が発明された時のシナリオは崩れても、分析が必要な対象と言うのは変わってないと思います。

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