2008年10月11日

日本とフランスにおける文化による外交


Saint-Malo, France
フランスの日々:英語の浸食からの言語防衛に見る日本とフランス」には、「言語侵略からの防衛に余念がないフランスと、危機感のない日本ですが、おそらく英語浸食がより進んでいないのは日本だと感じます。」と書きました。これと似たような構図なのが、日本とフランスの文化による外交にも現れているような気がします。

文化による外交はフランス外交の大きな柱の一つです。「[書評] フランスの外交力—自主独立の伝統と戦略」に以下の記述があります。
文化は、フランス外交の力の源泉である。フランスは、良く知られているように、国を挙げて文化を振興し、海外にも積極的に発信してきた。(P.143)
フランス人の考え方、フランス的な思考様式、知的方法論などを、世界の多くの人々に共有させることを通じて、国際社会におけるフランスの影響力を拡大し、フランスがより強い主導権を発揮できるようにしていこうとの、したたかな戦略が働いている。(P.147)
ルーブル美術館、オルセー美術館、オペラ、パリコレクション、ワイン、チーズなど、フランスの文化の浸透力そのものを外交に使っていっています。また、文化の振興には努力と予算を惜しみません。そういった努力と予算をつぎ込んで出来ている組織の一つが、uniFrance(世界中でフランス映画の振興をめざします)のような組織なのかもしれません。

フランスがやっているような文化振興とその影響力を外交に利用しようとする努力は、日本ではあまり聞きません。武士道、空手、歌舞伎、浮世絵、書道、寿司、天ぷら、着物、下駄などなど、豊富にある日本の文化を外交に使うと言う発想はあまり聞かないような気がします。最近は、麻生氏がサブカルチャー(マンガ、ゲーム、アニメ、カラオケ)の海外展開による外交を考えているようです。
外務省: 第1回国際漫画賞についての報道
今日、日本のイメージは、Jポップ、つまり、特に漫画やアニメに基礎を置く現代日本ポップカルチャーの輸出によるところが大きい。...(略)... 麻生外相は熱く語る。『JポップとJファッションの普及力は、想像をはるかに超えています。世界で最も有名なサッカー選手の中の2人、ジダン選手とトッティ選手は、テレビで「キャプテン翼」を観て育ちました。』
日本発のサブカルチャーの浸透力の強さはこのブログでもたびたび触れてきました。もしこれらの文化が、フランスに存在していたら、間違いなく歴代の外交官が真っ先に文化による外交に利用するでしょう。フランス発の文化がやや伝統的なものに偏りすぎているので、映画振興と共にこれらのポップカルチャーの波及のために夢中になるに違いありません。麻生氏が、最初にポップカルチャーによる外交を唱えた時は、突拍子も無いアイデアだと受け取られたそうですが、フランスから見るとごく普通の方向性のように見えます。

伝統文化を除いた現代の人気文化を待望しながら、なかなか生み出せてないフランスと、現代の人気文化を多数擁しながら上手く外交に利用できていない日本は対照的に見えます。このような差が、前のエントリで述べた「放射型外交のフランスと妥協型外交の日本」の差なのでしょう。こういったところでも、前のエントリで述べた結論を再確認します。
フランス人にしたら、なぜ日本が持つ経済的な影響力や文化的影響力をもっと積極的に他国に及ぼさないのか不思議に感じるでしょう。両国が外交を通じて目指すビジョンの違い、体質の違いといえるかも知れません。

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