2008年9月17日

[書評] 日米中三国史―技術と政治経済の55年史

日米中三国史―技術と政治経済の55年史 (文春新書)
敗戦直後のアメリカ進駐軍の経済政策から→高度経済成長へ挑戦(日本と中国)→ベトナム戦争と文化大革命→日本の経済大国への道→最近の経済の話と順を追って日本、アメリカ、中国の経済の話を展開している本です。日本、アメリカ、中国の経済の話は、悲観論や楽観論が入り乱れた状態ですが、このように三国がどのような軌跡を辿って今の状況があるのか確認できる良書だったと思います。

ただし、今後の展望に付いての結論は、同意できることが多い反面、2000年に出版されたこともあり少し前提が古く、パンチが無かったと感じました。アメリカ同時多発テロ後のイラク戦争や、サブプライムローンの信用崩壊などの、大きな動きが織り込まれていないのが大きいです。今から本書を読む方は、日々現れる新しい経済ニュースに対し、これまでの三国の歩みを頭に入れた上で、自分の頭で考えることが良いと思います。

最終章から面白かったところを抜粋します。
表7のこの経常収支の黒字は、国際的には評判が悪いのであるが、日本経済としては、それは日本の工業製品の国際競争力を表しており、これこそ日本経済の頼みの綱である。この黒字が赤字になったら、その時は日本経済は本当にがたがたになっており、人心は荒れていることだろう。(P.183)
本書には10年前の1997年までのデータしか載っていないのですが、ウェブで2005年までのデータを見つけました。依然として日本は経常黒字を続けていることが分かります。
アメリカも中国も、国際的にも国内的にも挫折や失敗を重ねて苦しみ、ようやくそれを乗り越えて来たのに対して、日本経済は一九八〇年代の末まで、石油ショック後の二年ほどの不況を除けば、順調に成長して来たと言うことである。大蔵省であれ金融機関であれ、危機管理が下手なのは、それが戦後初めての経験で、危機に対処する制度も人材も欠いていたからではないか。(P. 187)
リーマン・ブラザースの破綻前に、この文章を読んだ時はいったん納得したのですが、果たしてアメリカが危機に対処する制度と人材を豊富にもっているのかは、これから分かることかもしれません。
一九九〇年代の日本の製造業は、戦後最大の曲がり角の時期をよく凌いで来た。それが金融機関の豊富な預金残高をもたらした原因の一つであろう。ところが金融機関の方はその金を不動産投機やデリバティブなどに回し、賭け事に敗れて、すってしまった。そして製造業に対して貸し渋り、なかには黒字倒産する企業も出てくると言うのは、技術系の私などからは、なんとも釈然としない。まじめに働く息子が稼いだ金を父親に預けたところ、親はそれを博打ですって、息子は窮地に陥ったと言う感じである。(P.187)
例えは簡単すぎて、そんなに簡単に言い表せないことかもしれませんが、大まかには的を得ているのかもしれません。僕も技術系の人間なので、お金を転がすことでお金を増やすコンセプトが釈然としません。当初はデリバティブも相場変動によるリスクを回避するために開発されたものなので、存在自体は有用であることは同意できます。相場で努力して利益を得ようとする行為も同意できるのですが、相場師にお金を預けることで何もせずお金を増やせると考えている人が出ることが、問題だと思います。全ての人が何の努力もせずに、お金が増やせるはずがないのですから。
日米中三国史―技術と政治経済の55年史 (文春新書)
星野 芳郎 (著)

第1章 1945年—勝者と敗者の出発
第2章 高度経済成長に挑戦した日本と中国
第3章 ベトナム戦争と文化大革命
第4章 日本—経済大国への道
第5章 日米中—21世紀への世界戦略

戦後55年、日米中三国の政治・経済・技術は、ともに挫折と失敗を繰り返してきた。しかし、ここ十年にわたるアメリカの金融改革や中国の行政改革は、いずれも世界的視野に立っての大胆な改革であった。日本も今こそ、目先の政治や経済の動きにとらわれずに、21世紀への広い展望をもって、この危機を乗り越える世界戦略をねらなければならない。

2 comments:

花園 祐 さんのコメント...

 陽月秘話の花園祐です。

 先日に私のブログでこの本をご紹介いただき早速本屋で探してみたのですが、不思議なくらいにどこ行っても見つかりませんでした。せっかく紹介してもらったのに、申し訳ありません。そろそろあきらめて、アマゾンで買おうかなと思ってます。

 それにしても、中国語を三年学んでいたとおっしゃられていましたが、フランス語も学んでいらっしゃるのですね。私も四ヶ国語を目指してロシア語に手を出しましたが、こちらは三日坊主で終わってしまいました。

Madeleine Sophie さんのコメント...

花園さん、本屋にないのは、出版された年度が古いためだからでしょうかね。歴史の話だと、情報が古くても正しいものだったら役に立つので、今読んでも興味深いところもありましたよ。

中国語は高校・大学で選択していて、上海にも留学に行きました。その時は、中国語だけで生活できていたのですが、大部分を忘れてしまい残念です。最近は、中国人の友人を相手にたまにしゃべって、楽しんでいるぐらいですね。

今はフランスに住んでいるので、フランス語をやっています。中国を学んでいた5年前に比べるとネット上にネイティブの会話が大量にあるので、効率的に学習できるようになったと感じます。フランス滞在が終わったら、中国語も始めたいとは思っているんですよね...

フランス語の勉強の仕方(まとめ)

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