2008年8月18日

[書評] 国家の品格

国家の品格 (新潮新書)
Wikipediaによると、2年も前の2006年5月までに発行部数265万部を突破したミリオンセラーです。今さら本ブログですすめる必要も無いとは思いますが、オススメです。文字が大きくて2時間ほどで読めるにも関わらず、いろいろな興味深い意見が入っています。著者の意見はかなり極端で、とても頭から信頼してよいモノではありませんが、世間一般の常識を安易に信じることの思慮の足りなさを感じさせてくれます。例えば、論理の力を過信する現状を否定する章に出てくる例えで、小学校で英語を教える教育を否定する箇所を挙げます。
「小学校で英語を教える→英語がうまく話せるようになる→国際人になる」(P.59)
「小中学校で国語を強化し読書を奨励する→人間の内容が充実する→国際人になる」(P.60)
最初の論理が世間一般に受け入れられている論理で、下の方が著者の論理です。最初の論理を頭から信じてしまっている読者にとっては、その対案として著者の論理が提示されることで、元の論理を疑うことが可能になります。

本書は世の中に影響力のあるブログによれば5段階評価で1を付けられているなど、こき下ろしといってもいいような書評も多く見られる本です。
要するに、著者が数学者であることを除けば、フジ・サンケイ・グループの雑誌によくある「床屋政談」にすぎない。『国家の品格 - 池田信夫 blog
最初は、おもしろい冗談だと思って読んだが、その後も新聞やテレビで著者が同じ話を繰り返しているのをみると、どうやら本気でそう信じているらしい。『『国家の品格』と『ウェブ進化論』 - 池田信夫 blog
こういった評価も良く分かります。本書は著者の個人的な意見であって、これを頭から信じ込んでしまうことはかなりまずいことだということには、同意します。既存の常識を疑えるところまでは良い薬なのですが、著者の論理をそれに替わって信じ込んでしまうのは、かなり悪い薬です。この本の良いところは、世の中にある信じられやすい事柄について、まったく違う視点の対案が提示されたことです。新しい視点を何の疑問も無く信じ込んでしまうのは止めましょう。

本書についての評価が大きく割れるのは、つまりは読者を信用するか信用しないかにかかっていると思います。読者が柔軟な思考の持ち主で、著者の斬新な視点を評価した上で既存の常識と著者の意見の両方を疑うことが出来きると仮定すれば、本書は良書になります。逆に、読者が著者の意見を妄信すると仮定すれば、本書は悪書になります。それであれば、本書に「本に書かれていることは著者の個人的な意見で、妄信しないでください」と書かれていればいいのですが.....実は最初のページにすでに書かれています。
私は、自分が正しいと確信していることについてのみ語るつもりですが、不幸にして私が確信していることは、日本や世界の人々が確信していることとしばしば異なっております。(P.11)
もっとも、いちばん身近で見ている女房にいわせると私の話の半分は誤りと勘違い、残りの半分は誇張と大風呂敷とのことです。(P.12)
本書をすすめるかどうかは、読者がどのように読むかにかかっていますが、僕はお勧めしたいと思います。様々な情報がインターネットやメディアを通じて配信される時代に、ベストセラーだからといって一つの本を頭から信じる読者がそれほど居るとは思えません。読者はもっと柔軟な思考を持っていると信じます。
国家の品格 (新潮新書)
藤原 正彦 (著)

第1章 近代的合理精神の限界
第2章 「論理」だけでは世界が破綻する
第3章 自由、平等、民主主義を疑う
第4章 「情緒」と「形」の国、日本
第5章 「武士道精神」の復活を
第6章 なぜ「情緒と形」が大事なのか
第7章 国家の品格

日本は世界で唯一の「情緒と形の文明」である。国際化という名のアメリカ化に踊らされてきた日本人は、この誇るべき「国柄」を長らく忘れてきた。「論理」 と「合理性」頼みの「改革」では、社会の荒廃を食い止めることはできない。いま日本に必要なのは、論理よりも情緒、英語よりも国語、民主主義よりも武士道 精神であり、「国家の品格」を取り戻すことである。すべての日本人に誇りと自信を与える画期的提言。

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