2008年7月20日

[書評] フランス三昧

フランス三昧 (中公新書)
大学の教授がフランスの歴史と文化と、フランス語について書いている本です。第1部 「フランスとは何だろう」はフランスの歴史・文化・社会などが分かりやすく書かれていました。また、日本との関わりの文章も多くて興味深かったです。逆に第2部の「フランス語とは何だろう」では、フランス語の成り立ちと関係の深いパトワ(方言みたいなもの)が書かれていました。ここについては、興味のある人とない人の受け取り方に差がある気がします。僕自身は、フランス人がパトワに関して複雑な感情を抱いていることが分かり興味深かったです。特に驚いたのは、一九九九年のクロード・デュヌトンの『フランス語の死』からの引用でした。
フランスはヨーロッパで、いやおそらくは世界で唯一の、この一〇〇年以来人口の五分の四が言語を変えた国である。(P.163)
第3部は、著者の分析が書かれている部分です。日本でのフランスの受け取られ方についての以下の指摘が面白いです。僕自身フランス人と接する前にはなんとなくこういったイメージだったような気がします。
日本では一八七〇年(明治三年)の「普仏戦争」敗北の結果、フランスが縮小鏡にかかり、ドイツが拡大鏡にかかった、と何度も指摘して来た。英国崇拝、ドイツ贔屓、米国憧憬が明治文化の特質である。「フランスかぶれ」は「変わっている」、よくて「凝っている」と思われがちだった。(p. 203)
フランスとドイツのイメージの偏向は、著者によると普仏戦争の影響が甚大だそうです。フランス人とドイツ人のイメージとして本書で引用されている『フランス文学六十年秘話』では、以下の通りです。フランス人は、
ラテン民族にして世界中もっとも浮華軽躁の人種たり。装飾、贅沢品のごとき主にフランスをもって最もとす。仏国人種は近年生殖力大いに衰え、出生の数、死亡の数に及ばず。人を持って仏国衰退の兆となす。(P.204)
一方、ドイツ人は、
チュートン民族にして気象敢為、忍耐に富み、勤勉、勉強、愛国の意志最も厚し。決闘の風俗のごときドイツの得意とするところにして、勇敢、剛毅の気概を養うに足る。また兵士の勇敢なる、稀なるところなり。(P.205)
だそうです。現在では、多少イメージは薄まっているかも知れませんが、日本で受け取られる基本的なイメージには合致するような気がします。著者は、普仏戦争の結果、ドイツ留学生が増えたことを理由に挙げています。フランスへの誤解は、ドイツへの留学生が帰国の途に付いたときに、パリに寄って飲み屋や歓楽街で遊んで帰るときに接したイメージで語られるとあります。また、英語では変なことはフランス風と表現され、日本では英米からの英語イメージが伝わりやすいために、イメージが歪むとあります。一面を表していると感じます。

他にもいろいろと興味深い指摘がありましたが、以下の文章は驚きです。日本は国民国家としては後発だと感じる日本人が多いですが、実は意外と早かったそうです。
「国民国家」と「徴兵制」こそ、フランス大革命の発明であり、以後にに統一を実現した国家が採用する近代化の原理となる。なんと、世界でフランスに次いで に番目に「国民国家」を実現したのは、明治の日本であった。...(略)...日本の国民国家成立はイタリア王国、ドイツ帝国の成立に鼻の差で先んじている...(略)... (P.94-95)
フランス三昧 (中公新書)(新書)
篠沢 秀夫 (著)

1 フランスとは何だろう
今のフランス
「フランス」の成り立ち
「フランス人」の成り立ち
「近代」の成り立ち)
2 フランス語とは何だろう
今のフランス語
フランス語の成立とそのイメージ
「良いフランス語」の誕生
「良いフランス語」の強制
3 文明としてのフランス
フランス文明の特質
フランス文明の問題点—長所は短所
フランス文明の危機
フランス文明の未来

日本人がもてはやす、きらびやかな「おフランス」は、はたして真実の姿でしょうか。世に満ちる誤解の表層土をかき分けて、フランスという国の真の姿をお目にかけます。「フランスと日本は似ている」という驚くべき発見。フランスにとりわけ関心がない人も、フランス語を習ったことがない方も、上っ面なガイドブックを飛び越えて、一気に真相へ。気っ風のいい篠沢節が冴える、教授流フランス学の“実に愉快”な集大成。

2 comments:

ちびた さんのコメント...

>>明治の日本であった。
なるほど、そうなんですね、確かに驚きです。

明治時代のこれら大きな動きは実は江戸時代の蓄積とうっ憤があったからだと言われることがありますよね。
歴史といえば戦国時代の本ばかり読んでいる私も江戸時代の本が読みたくなりました。

フランス三昧の書評を読んでいて思うのはちょっと変ですよね(^^;)

Madeleine Sophie さんのコメント...

江戸時代全体の様子はあまり知らないんですが幕末の歴史は面白いですよ〜。激動の時代と言う感じがします。数多くのスターが一時期に現れるのはどうしてなんだろうとか感じますね。

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