2008年6月5日

[書評] 知っていそうで知らないフランス

知っていそうで知らないフランス―愛すべきトンデモ民主主義国 (平凡社新書)
日本で一回読んだことある本をこの書評のために、もう一度買って読んでみました。著者は、フランスに特派員として渡って来て、政治・経済の記事を書いていたそうでこれらの分野が詳しく分かりやすく書かれています。2001年発行ということで、シラク大統領の時代で、ユーロは出回っておらず、イラク戦争も始まってない時期なので、少し古いですが。

まず、フランスの社会を牽引するエリートと気ままな一般人との意識の差について触れられます。この辺の日仏の違いについては、このブログの「日本の弱み:指揮官不在とフランスの強み」でも触れました。簡単にまとめると、エリートは日本以上に能力があり、庶民は日本以下の能力しか持たない傾向があります。本書では、以下のように触れられます。
市役所の窓口業務が市民の間で評判が悪かったので、あるとき、管理職が職員を集め、「みなさんも評判をよくするよう、工夫してほしい」と訓示した。これに対し、ある女性職員は即座に「わたしは考えるための給料をもらっていない」と言って、「工夫」を拒否したという。...(略)...「エリートではない自分達は決められた仕事をすればいいのであって、ものを考えるのは偉い人の役目でしょ」というわけだが...(略)...(P.22-23)
これでは、トヨタ式の現場から上がるノウハウを基にしたカイゼンなどはやりようがありません。上の例はさすがに極端な従業員だったようですが、傾向としては理解できます。また、失業についての印象もずいぶん違います。フランスでは失業は社会問題の被害者と言う点が強調され、個人に責任を押し付けることは悪であると、論じます。この点を解説する小話は面白かったのですが、長いのでこのエントリーでは紹介できませんので、興味のある方は書店で。
「失業は自分の責任」という言葉が、フランス人にとってはどれほど非現実的で、発してはならない言葉かもよくわかった。(P.59)
郊外に住む一市民として、下の言葉はビックリしました。僕の住んでいるところは、比較的治安がいいところなのですが、郊外という単語が社会問題を意味するらしいです(していた?)。いまでもパリ北側の郊外、特にサンドニとかは危ないと聞いたことがあります。
劣悪な居住環境と教育条件、治安の悪化、高い失業率など、問題がワンセットとなってパリから外側に吐き出された結果だが、吐き出しても問題が解決するわけでもなく、郊外を意味する「banlieue」という言葉は、いまやそれだけで「郊外の社会的問題」を指す言葉として使われるようになった。(P.171)
「日本へ旅行する前に知らなければならない10の習慣」でも書きましたが、日本はやはり安全な国です。フランスでは小学生の登下校は大人がつかないと認められていないそうです。共働きの夫婦や、シングルマザー、ファーザーへの負担は少なくないと考えられます。殺人や傷害など悪いニュースが報道されていますが、やっぱり日本は安全であってほしいと思います。
子供が小学生の場合、登下校は子供だけでは認められず、家族の誰かが迎えにいかなければならないので、こうしたお手伝いさんは欠かせない。(P.200)
知っていそうで知らないフランス―愛すべきトンデモ民主主義国 (平凡社新書)
安達 功 (著)

ストと国民の義務
エリートとグランゼコール
「第三の道」あるいは反米意識
フランス人の環境意識
二回投票制はお好き?
第五共和制の矛盾「コアビタシオン」
こうして内閣は崩壊した
戦争責任と共和国
人権の母国フランスの現実
予審判事の孤独な戦い
地方自治、現実と矛盾
マルチカラーのフランス
家族あるいは非婚カップル、そして女性

近代民主主義の発祥の地フランス。しかしその内実をのぞいてみると、かなりトンデモないことが…。権利はたっぷりあっても義務はまるでなし?頭を使うこと はぜんぶエリートまかせ?左翼も保守も汚職にまみれ、環境意識は希薄、人権概念もなんだかちょっと変わってる…。それでもフランスという舞台はまわってゆ く。特派員がみつめた奇妙で愛すべき国の素顔。

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