2008年5月10日

"Le Japon"(1979年出版)を読んで

1979年出版の”Le Japon ~économie et société~ (日本、経済と社会)”を読みました。パリの古本屋で1ユーロでした。1979年当時のフランスにおける日本への関心を推測してみると、その西欧とは全く違う社会を作り上げて、経済的に成功した日本を脅威と感じていたと考えられます。日本は1956年の経済白書で「もはや戦後ではない」と謳い、1970年には早くもアメリカに次ぐ世界第二位の経済大国の座を手に入れました。この本が出版されたころは1970年代に二度発生したオイルショックにも日本は省エネ技術をはじめとする努力で乗り切ろうとしていた頃でした。

この本は、日本に関する論文を多数収録した形になっています。個人名で書かれている論文や、ルモンド紙などの新聞の投稿も収録されていました。« samuraï »、« Roju »、 « zaikai »、« Shogo-shosha »、 « amakudari »、 « yokosuberi »、 « chiiriyo »、« zaibatsu »、 « sanchan nogyo »などの日本語が紹介されていて、日本への関心の高さが伺われました。かなりの知日派でないと読みこなせないレベルまで、高度に日本の文化が紹介されています。

終身雇用、年功序列といった、日本型の経済システムがどれほど違うかが述べられていました。特に終身雇用はうらやましさと、批判が入り交じったような調子になっているのが、興味深かったです。日本人による論文もありましたが、公害や劣悪な居住スペース、談合、未熟な政治など批判に富んだものが多いように感じられました。特に結論のタイトルは「危機の中の日本」と題されていて、「厄介な選択の自由 」題されたルモンド紙の論評が紹介されています。一部を翻訳してみます。
自由の選択(仕事、職業)は自身にとって厄介なだけでなく心配の種である。フランスでは« la Femme de sable (砂の女)»の小説で知られる安部公房の文学で、集団が無く彼自身が融合しているためアイデンティティの無い個人が、都会で迷子になった恐怖が全く説明されている。
この論評は安部公房の砂の女を呼んでいる前提で書かれているのが驚きです。日本の新聞だとしてもかなりの高級紙であるといった趣がすると思います。ましてやフランス語の新聞でこの小説が説明無しに引用されているのは、安部公房の人気なのでしょうか。安部公房の切り取った日本人の集団依存の精神性はフランス人にはさらに衝撃的に迎えられたのかも知れません。
Le Japon -économie et société-
Hubert BROCHIER

序論
日本の社会生活における個人と集団
集団の所属、日本人のパーソナリティーの基盤(Chie Nakane)
日本の集団の典型的な実例:会社 (S. Kato)
序列化、社会的秩序の基盤 (Chie Nakane)
集団による個人の吸収 (S. Kato)
集団優位の長所と短所 (S. Kato)
集団優位は天皇崇拝と経済ナショナリズムにおいて顕著だ (S. Ishihara)
徒党のシステムと政界の金 (Le monde)
集団における考え方の多様性と日本の民主主義 (Esprit)

経済構造
戦前の"Zaibatsu"(財閥) (Ch. Sautter)
今日における経済集団 (E. Maciejewski)
今日の経済における集団原則の場 (E. Maciejewski)
伝統的ZaibatsuにおけるShogo-shosha(総合商社)の役割 (D. Haber)
今日におけるG.S.C(総合商社)の切り札 (D. Haber)
零細企業の余命と頑固な二元論 (Ch. Soutter)
変動の緩衝剤としての中小企業従業員と下請け (Ch. Soutter)
成長の至上命令によって犠牲となった農業と農民 (Le Monde diplomatique)
とくに銀行預金と会社の借金の大規模支援 (E. Maciejewski)

企業の助力における伝統と特殊性
労働者政策の一般的特色 (N. Takahashi)
終身雇用システムの理由 (H. Brochier)
年功序列における賃金 (J. Esmein)
労働者の流動性が激しいながらどのようにそれが存在するか (Le Monde)
会社における批判の制度化と同意の形成 (J. Esmein)

財界における国の支配的な役割
日本の資本主義は同時に「独占的」で国有であった (N. Takahashi)
現代日本の役人におけるsamouraïたち (M. Takane)
行政と財界の共謀 (K. Okano)
Amakudari: 高級官僚の私企業への天下り (Ch. Johnson)
権力の役人達?(La documentation française)

25年間にわたる経済成長の後の状況
戦後の日本の国民総生産の成長 (日本銀行)
日本の経済自由化 (Ch. Sautter)
輸出の戦略 (Ch. Sautter)
東南アジアにおける日本の拡大 (Esprit)
東南アジアとの不均衡な関係 (Ph. Pons)
日本、世界第3位の輸出国 (Le Monde)
1955年から1973年までの輸出の構造 (日本通商産業省)
日本製品の外国に対する依存 (日本通商産業省)
Kogai: 工業汚染 (E. Maciejewski)
社会設備の断続的不足 (E. Maciejewski)

結論:危機の中の日本
厄介な選択の自由 (Le Monde)

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