2008年5月24日

[書評] 若者はなぜ3年で辞めるのか

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)
2006年9月に発行されてベストセラーになった本書を遅まきながら手に入れて、読んでみました。僕は日本企業に就職したことはありませんが、日本企業に就職しようとしていたことがありました。会社に就職する際、会社側からは肯定的な説明しか出てきません。それを知っているその会社に就職していた研究室の先輩は、その会社は基本的には悪くないと断りつつ、その会社の短所を15ほど挙げてくれました。詳しい項目は忘れてしまいましたが、人事に対する閉塞感から、モチベーションを保つことの難しさまで触れられていました。その時は、世間的には良い会社といわれていても、内部はいろいろあるんだなぁという感想でした。

この本は、その感触の理由を明快に解き明かしてくれたと感じました。これから就職する学生と就職して間もない社会人は知っておくべきことが多いです。就職して5〜20年ぐらいの中堅は降り掛かる悲劇を認識するために知った方がよいかも知れません。定年間際の人は、耳が痛いと思いますが読んでほしいと思います。

簡単に内容に触れておくと、年功序列と終身雇用のシステムが完全に崩れ去ったということが、書かれています。このシステムを維持することがどれだけ不可能なことか思い知らされます。本書では、若い時の成果を将来のポストとして保証するやり方は、成長期にしか不可能な制度だったと説きます。
つまり、これから先何十年にもわたってずっと成長が維持でき、間違っても赤字なんてありえないと断言できなければ、この制度は維持できないのだ。(P.44)
年功序列も、その対極の成果主義も勝者と敗者が生み出される点では同じです。前者は、年齢でそれらが決定され、後者は能力や実績でそれらが決まるだけです。どちらも差を生み出す点では一緒だと断った上で、年功序列の問題点をこのように指摘します。「わかいうちは我慢して働け」と言うのは、将来の昇進を約束しているように見えて、実はウソによる搾取だと解釈します。
だが、「大丈夫、いまはきついけど、将来は楽になるから」と騙してこき使い、人生の折り返し地点を過ぎたあたりで、「ああ、自分は騙されたのか」と思い知らされるようなシステムは、一度ぶちこわしてしまった方が、マシだろう。(P.157)
年功序列はすでに、維持され得ない制度だと結論されますが、一方年功序列が日本をここまで連れて来たということで、一定の評価をしています。
たしかに、年功序列は優れた制度ではあった。それは、従業員の勤続年数を引き上げ、技術の長時間の蓄積を可能とし、結果として日本のモノ作りは世界一にまでのぼり詰めた。(P.126)
この意見には賛成です。短期の雇用者を安くたくさん雇えば、短期的な利益は上がっても、長期間の技術の蓄積は断絶してしまいます。日本企業の強みは技術にあるので、これは由々しき事態です。現状残る年功序列も維持が不可能なことは納得しましたが、なんとかしてこの長期間の技術の蓄積を可能とする体制を確立することは急務だと考えます。本書の最後の注釈(※)では以下のように書かれています。
ちなみに、本書のテーマではなかったので詳しくは書かなかったが、年功序列と成果主義の共存という可能性については、前書『日本型「成果主義」の可能性』(東洋経済新報社)で取り上げている。
どのようにこれを達成するかは、ここで提案されているのかも知れません。いつか手に入れて読みたい本になりました。
若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)
城 繁幸 (著)

はじめに 「閉塞感の正体」を見きわめる
第1章 若者はなぜ3年で辞めるのか?
第2章 やる気を失った30代社員たち
第3章 若者にツケを回す国
第4章 年功序列の光と影
第5章 日本人はなぜ年功序列を好むのか?
第6章 「働く理由」を取り戻す

今や、入社3年で3割の若者が会社を辞める時代になった。本書は、「内側から見た富士通」の著者である城繁幸氏が、若者世代を覆う「閉塞感の正体」を指し 示す。特にIT技術者は深刻で、明確に30歳で昇給を頭打ちにしている企業も珍しくない。キャリアパスを早期に閉ざされた30代がモチベーションを消失 し、メンタルトラブルを抱える例が増えているという。若者が置かれている厳しい現実を知るのに適した一冊であり、ITマネジャも一度目を通してほしい。

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