2008年5月4日

[書評] アメリカに「NO」と言える国

アメリカに「NO」と言える国 (文春新書)
フランスに来ると、イギリスとアメリカ(アングロサクソン)というグループとフランスとヨーロッパというグループとの違いがよく見えてきます。例えば、前者のグループはグローバリゼーションを主導していて、後者のグループはそれに抵抗したりしています。そのほか2つのグループには全く違う考え方や文化が存在しています。日本では「欧米」という言葉でくくられて見えにくくなっている部分です。日本は、歴史的経緯からイギリスとアメリカのアングロサクソンのグループの影響を強く受けています。本書はこの2つのグループの根本的な差異を洗い出していて、以下のように述べられています。
この本は、ユニヴァーサリズムやコミュノタリスム、民主主義や個人主義などいろいろな概念の成立と変遷をたどり、日本における混同を整理し、ユニヴァーサリズムを擁護、再評価するために書かれたものだ。...(略)...それを理解しなければ「欧」と「米」を本当に分析することはできない。宗教的なコンテキストの説明は、今の「欧米」の文献を見る限りあまり言及されていないので見落とされているが、欧米人がそれに付いてわざわざ書かないのは、まさに、彼らに取ってそれが自明のことであるからなのだ。(P.23)
二つのグループを「犬の連邦」と「猫の連合」と呼んでいて、これがなかなか面白い比喩だと思います。149ページのイラストは犬と猫が描かれていて、犬の連邦では大小さまざまな犬が、旗を掲げる最も大きな犬の後ろに付いて同じ方向を見ています。それに対して、猫の連合では旗は地面に刺さっており、それに対して手を振っている猫やそっぽを向いている猫、丸まって日なたぼっこしている猫などが描かれています。イラストには二つのグループに対して、説明書きがしてあります。
犬の連邦:コミュノタリスム、ピューリタン的、トランスナショナル、連邦、ファストフード、アメリカ、多元
猫の連合:ユニファーサリズム、カトリック的、インターナショナル、連合、スローフード、フランス、多様
僕がシラク元大統領について興味があることは「[書評] シラクのフランス」にも書きましたが、本書にもシラクに関する記述がありました。特に本全体の大きな構成に関わっている部分ではないのですが、紹介します。
実はシラクというのは、夫人が「フランス人はわたしの夫のことを嫌っている」と嘆いたくらい、政治的な反対派はもちろん自派の内部からもさんざん馬鹿にされ、たたかれてきためずしい政治家だ。若くして頭角を現したのに、大統領選では何度も敗れ続け、揶揄され、危険視すらされて来た。(P.203)
アメリカに「NO」と言える国 (文春新書)
竹下 節子 (著)

第1章 アメリカとフランス—2003年イラク開戦前夜
第2章 善悪二元論とキリスト教
第3章 コミュノタリスムとユニヴァーサリズム
第4章 ユニヴァーサリズムの危機
第5章 犬の「連邦」と猫の「連合」
第6章 大きな物語の創造へ
終章 猫への質問—まとめにかえて

仏在住の比較文化史家が宗教的背景も含め、「欧」と「米英」の違いを解説。アメリカ“グローバリズム”に「NO」と言った唯一の国の政治姿勢を、ユニヴァーサリズムの視点から分析する。

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