2008年4月29日

[書評] シラクのフランス

シラクのフランス (岩波新書)
フランスの大統領は個性があって面白い。その中でも、僕はシラク元大統領が一番面白いと感じます。シラクは1995年5月17日から2007年5月16日まで大統領を務めたので、現時点ではまだ辞任から1年も経っていません。まず、12年間のフランス大統領の職の中で、フランスに対して大きな利益を与えたと感じます。EUを強力に前進させ、ユーロの導入も成功に導きました。将来のフランスを規定する重要な役割を果たしたと考えられます。シラク大統領の魅力は、シラク大統領が大の日本ファンだったことだけでなく、その行動力やその功績など多岐にわたります。

シラク大統領の日本好きに対しては、本書ではこのように書かれています。エピソードもいろいろ紹介されていて面白いです。
シラクが主要国首脳の中で、群を抜いた知日派であることは広く知られている。だが、「知日派」という言葉はこの場合、いささか控えめに過ぎる。「熱狂的な」(フランス外務省当局者)日本ファンというのが実情だ。(P.49)
シラク大統領の行動力を評する人物は多くいますが、最も影響の大きかった人物からの評として、ポンピドゥー元大統領のものがあります。ポンピドゥー元大統領は、シラクを重用した人物として知られています。
そのポンピドゥーがシラクを評した言葉が広く流布している。
「私の自宅からエリゼ宮(大統領府)までトンネルを掘ってほしいといえば、シラクは翌日までに完成させて、出口で待っているだろう。」(P. 57)
また、シラク大統領の行動力は、政敵であったミッテランからも批判を含みながらも、力量を評価されていました。
...(略)...ミッテランは、皮肉まじりにシラクを「自分がなぜ回っているのかも分からずにくるくると回るコマのような人間」と述べた。(p. 57)
「私は、シラクが多くの能力を持っていると言いたい。その能力を適切な場所、適切な時に性格に発揮することを望む。」一九八六年一二月、ヨーロッパ1ラジオ)
「なんというエネルギー、なんという行動力、なんという快活さ。惜しむらくは、冷静な判断力に欠ける」(八七年一二月、シルビー・ピエールブロソレットに)(P 58)
この本はシラクを称賛する本ではなくて、シラクの栄光と挫折について分析されています。シラクの12年間の大統領任期はフランスを大きく変えたといえます。現在のフランスを知るには、最近のフランスで最も大きな影響を持った人物であるシラクを知ることが早道です。
シラクのフランス (岩波新書)
軍司 泰史 (著)

第1章 一九九五年、反乱の冬
第2章 地下四五〇メートルの孤独
第3章 さまよえるエリートたち
第4章 一九九七年、制裁の夏
第5章 国家の右手、国家の左手
第6章 ルペンのフランス
第7章 凡庸な男の特別な犯罪
第8章 アメリカ・コンプレックス
終章 変わる国、変わる人

高い失業率、極右の台頭、深刻化する移民問題—。グローバル化の進展と欧州統合の拡大という歴史的な転換の中で、フランスはどう変わろうとしているのか。 また、国際的な反発のもと核実験を遂行し、その一方でイラク戦争に強固に反対したその真意は。一九九五年以降のシラク時代に焦点を当て、現代フランス社会 の激動の軌跡を描き出す。

4 comments:

フランス生活観察人 さんのコメント...

Madeleine Sophie さん
いつも読ませていただいてます。
サルコジとフィヨンがよくインタビューで言っているのは過去20年、25年(つまりミッテランとシラク時代)フランスは他国に比べると経済面、社会面で停滞しその結果が今日の高失業率、低経済成長の原因だということですね。もちろん前任者を否定するのは新人の定石ですから言葉どおりに取ることはないのですが、サルコジの依頼でジャック・アタリが召集した委員会が今年2月に提出したフランスを成長・変革させるための300の採用すべき”デシジョン”を読むと日本に比べてフランスにまだないものが多く、確かに成長・改革の余地はあるんだと思いました。これらはミッテラン・シラクの積み残し案件といえるのではないでしょうか。もちろん、この300件の改革案に対しては与野党ともにブーイングが出てますけど、4年後までにどれだけ実現するか、すでに実現しつつあるものもあるので、その時のフランスが楽しみです。

Madeleine Sophie さんのコメント...

もちろんフランスにはたくさんの問題がありますが、社会福祉を充実させた結果としての高失業率、低経済成長の問題はよく言われますよね。自由競争と社会福祉の充実のどちらが良いかは、現在でも答えのでない問題ですね。サルコジは自由競争を活性化しようとしてますが、フランスにおいて、自由競争がどのよう達成されるのかは、見物ですよね。

Madeleine Sophie さんのコメント...

300の採用すべき”デシジョン”は本屋で見た気がしますが、本文が全てwebで読めるんですね。機会があればブログでも触れたいと思います。情報ありがとうございました。

http://www.liberationdelacroissance.fr/index.php?accueil

Madeleine Sophie さんのコメント...

「フランスを変えるための300の決定」は内容が面白かったので、翻訳してみようと思いました。3分の1だけ翻訳してみたので、良かったらぜひ見てってください。たぶん、翻訳間違いが結構あると思いますが、、、

http://mesetudesenfrance.blogspot.com/2008/04/30013.html

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