2008年4月29日

[書評] ナポレオンを創った女たち

ナポレオンを創った女たち (集英社新書)
フランス革命は、現在の世界で普遍的な価値を持つとされる自由や平等が初めて主張された時の出来事です。それまで、誰も疑うことのなかった神授説を背景とした王権や、貴族の特権にNOを突きつけました。革命側の軍隊は、王権を維持しようとする他国の軍隊と戦うことになります。その軍隊を指揮したのがナポレオンでした。

ナポレオンは、圧倒的に不利な形勢でも40の戦争に勝ち続けましたが、それらの功績よりもナポレオン法典を作成したことの方が偉大なことであると考えていたようです。自分は「自由と平等」という疑いのない正義の守護者だったと言う自負なのでしょう。有名なナポレオンの言葉も紹介されてました。
「私の真の栄光は、四十の会戦で勝利を収めたことではない。ワーテルローがこれらの勝利の思い出を消し去るであろう。何事も消し去ることができないもの、永遠に生き続けるもの、それは私の民法典である。」(P. 195)
ナポレオン法典は、自由と平等の精神に溢れたもので、当時の世界ではずば抜けて先進的なものでした。しかし、人間は生まれながらにして自由で平等であると謳っているのにも関わらず、人間には女性と白人以外は含まれていませんでした。
『ナポレオン法典』において、現代社会においてあるべき女性の理想像の原則を謳ったのが第二一三条「夫は妻に保護の義務を負い、妻は夫に服従の義務を負う」である。(P.71 - 72)
現 在の世界の常識からしたら、女性蔑視と言われそうな条文も当時の世界からするとかなり進歩的だったのです。実際、明治の日本政府はナポレオン法典に注目し ていたそうですが、結局はこの法典が進歩的すぎて多くを採用することができませんでした。日本の明治憲法はドイツの憲法の影響が大きいことが指摘されてい ます。

本書では、ナポレオンの女性に対する関わりがこのナポレオン法典に影響を与えているのではないかという視点で書かれています。ナポレオンに最も影響を与えた女性は、母レティツィア、第一の妻ジョゼフィーヌ、第二の妻マリー‐ルイーズです。現在、世界を覆う自由と平等の理念を初めて具現化したナポレオン法典は、現在の世界にも直接的に影響を与え続けています。その民法典を創ったナポレオンが女性に影響されやすい人間であったのは、なかなか興味深い指摘です。
ナポレオンを創った女たち (集英社新書)
安達 正勝 (著)

英雄ナポレオン
第1部 今日の男社会の根幹を築いたのはナポレオンである
  • ナポレオンとフランス革命
  • フランス革命期の女性たち
  • 人間は自由にして平等、しかし女性は別
第2部 ナポレオンの運命は女性たちによって大きく左右された
  • 母レティツィアと社交界の女たち
  • 勝利の女神、ジョゼフィーヌ
  • ハプスブルク家の姫君、マリー‐ルイーズ
  • ナポレオンとわれわれ現代人
フランス革命からナポレオン第一帝政にかけての時代は、今われわれが暮らしている現代社会の出発点にあたる。世界の覇者として大胆に近代史を塗り替えたナ ポレオンは、『ナポレオン法典』によって今日の男社会の根幹を築くことにもなった。しかし、天才的軍人、鉄の意志を持つ男というイメージが強いナポレオン だが、意外と女性に影響されやすい面があり、その運命は女性との関わりによって大きく左右されたのであった。日本の民法にまで影響を及ぼしている『ナポレ オン法典』を一つの軸に据えて、現代男性の原点を探りつつ、人間ナポレオンの知られざる側面に新しい光をあてる。

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