2008年4月16日

[書評] フランスの外交力—自主独立の伝統と戦略

フランスの外交力―自主独立の伝統と戦略 (集英社新書)日本は対米追従の傾向が強いと言われていますし、フランス人もそう認知しています。これまでの日本は最も良い選択肢だったし、もしかしてこれからしばらくもそうかも知れません。アメリカはイラク戦争の戦費・平和維持で疲弊し、サブプライム問題で金融が崩壊しそうでも、ヨーロッパ連合(EU)の加盟国が27ヶ国になっても、中国・インド・南米が台頭しようとも、アメリカは現時点で人類史上最大最強の国家です。本書からの引用で、「今日唯一の大国と言えるのは米国のみである。...(略)...ペンタゴンとボーイングとコカコーラとマイクロソフトとハリウッドとCNNとインターネットと英語とをすべて足し合わせたこの状況は殆ど前例のないものである。(P.39)」となります。

軍事力、経済力、技術力、情報と全ての力がアメリカに集中する期間の対米追従は日本外交の安定期でした。世界がアメリカ一極化していくなか、フランスは多極世界を目指し先頭に立って、この流れに抵抗しています。グローバル化した世界で貧富の差が拡大していき、その中で一番利益を得ているアメリカが「ならず者国家は、先制攻撃してつぶしても良い」というような単独行動主義(ユニラテラリズム,unilaréralism)を強めていけば、世界はさらに危険な場所になるという疑念があります。フランスは植民地支配の経験とアルジェリア独立などの脱植民地化の苦い経験を通して、民族対立の根の深さを学んできました。本書では、以下のように紹介されています。
フランスにとってみれば、国際社会にとっての真の脅威は、貧困や差別、民族対立、文明間の対立などであり、それらは、政治的関与や経済的手段に寄って解決されるべきであった。従って、非西洋世界のの貧困や差別と行った問題に真剣に取り組むことが先決なのであって、いたずらに対決姿勢を示すだけでは、かえって文明観の対立を深めてしまうことになる。(P.36)
フランスが世界で実現したい理念や野望を持っていたとしても、フランスにはアメリカに対抗するためには全くの力不足です。フランスの高い理想・野望と現状の力不足がひどく乖離しているのです。フランスは多極世界の概念を引っさげてアメリカに対抗していますが、それもフランス一極主義が不可能だからという面も否めません。また、単独では達成困難な目標ではアメリカと連帯する必要が生じます。それを表す言葉として本書では、以下の言葉が紹介されています。
同盟すれども同調せず(alliés, pas alignés)(ヴェドリーヌ外相)(P.56)
....嵐の中では連帯し、凪のときには自主独立を保つ、ということである(ドゴール)(P.60)
その他、フランスが掲げる理想に近づくために、ヨーロッパ、アフリカ、言語、文化、軍事力において行って来た努力は、一見に値します。僕は、本書を読むまで、フランスの外交や政治については全く知らなかったですが、彼らに学ぶことは多いと感じ始めました。
フランスの外交力―自主独立の伝統と戦略 (集英社新書) (新書)
山田 文比古 (著)

目次
(amazon.co.jpより)
第1章 歴史上最悪の関係
第2章 イラク問題を巡る確執
第3章 仏米対立の本質
第4章 摩擦の歴史
第5章 付かず離れずの同盟政策
第6章 足場~ヨーロッパ~
第7章 勢力圏~アフリカ~
第8章 文化と言葉~文化のための外交、外交のための文化~
第9章 力~外交の最終的担保としての軍事力~
第10章 自主独立外交

GDPでは日本の半分に満たないフランスが、国際社会で存在感を保ち、自主独立外交を展開できる秘密はどこにあるのか?欧州の中原に位置する地政学的優位 性、アフリカ諸国との密接なつながり、イスラム世界との深い関係、文化・言葉を通じた影響力の確保、国連安保理常任理事国の地位、核保有国としての軍事 力…。フランスの切り札は数多い。米国一極化が進み、テロリズムが拡大するなか、多極的世界・文化的多様性を標榜して世界に影響を与え続けるフランス。その実像と国家戦略を、さまざまな具体例を挙げながらわかりやすく論じる。

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