ま ず、研究の進め方の差異としては、一言で言うとフランス人は分析・理論重視、日本人は解決策・結果重視の傾向があります。研究にはいろいろな段階があり、 論文を執筆する際にも大まかな流れとして、以下の流れがあります。論文にも表れているように、どんな研究にも必ずある流れです。
- 研究背景(Background)
- 現状の問題点(Issues)
- 問題点の分析/要求事項(Problem statement/Requirements)
- 解決策 (Solution)
- 設計/実装(Design/Implementation)
- シミュレーション/実験評価(Simulation/Evaluation)
- 結論(Conclusion)
日本:
研究チームリーダー「この問題を解決しなければならない。」
ミーティングで議論.........(略).....
リーダー「よし!この解決策でいこう。明日から実装、1週間後に実験評価だ。」
その後、実装に取り組み、1週間後に実験評価が終わる。
フランス:どちらのやり方にも必ず、良い面と悪い面が存在します。上記の例では、日本は迅速に結果を得ることができます。フランスは素晴らしい分析を手に入れています。しかし両方に短所が存在します。以下に短所を、またまたストーリーにします。
研究チームリーダー「この問題に対して、1ヶ月で問題点を分析、次の1ヶ月で要求事項をまとめ、次の1ヶ月で解決策を提案しよう。」
........(略)......3ヶ月がすぎ、素晴らしい分析が出来上がる。
リーダー「よしみんなよくやった。今日はコーヒーを飲んで仕事終わり。明日から実装しよう。」
後日.....このように、フランスと日本の考え方・研究の進め方にいろいろな違いがあります。上記の例は極端な例ですが、両国でありがちなストーリーだと感じます。
日本:「あれ!?よく考えたら、この解決策だとこのケースをカバーしてないね。違う方法でやり直そう」→上記のストーリー冒頭に戻り、ループ。
フランス:「3ヶ月かけた素晴らしい分析と解決策があるから、もうあとは実装するだけ。明日から実装を始めよう」→いつまで経っても、実装と評価ができない。
二つ目の差異は、議論における差異です。どちらの国でも議論は論理的に行うという了解があり、この了解は研究においては普遍的です。一方、議論に使われる言語が、議論に影響を与える場面が見受けられます。日本語で議論する場合は、敬語という上下関係を規定する概念が入ってきます。そのため、反対意見を言う場合には、以下のどちらかになるはずです。「おっしゃりたいことは分かりました。でも私はあたなの意見に賛成できません。」か、「お前の言ってることは間違ってる。俺は反対だ。」みたいになるはずです。論理の土場では対等でも、言語の土場では対等ではありません。フランス語、または英語で議論する場合には、チームメンバーに言語上の上下関係はありません。フランス語では「あなた」はtu、英語ではyouとなり、誰に対しても同じ文句で反対の意見が言えます。
議論を行う言語は、心理的に議論に影響を与えていると思います。日本語では、チーム内で序列が決まっているため、リーダーを頂点としたヒエラルキーとしてプ ロジェクトの協調作業に優位に思います。一方で、自由な立場で反対意見を表明しにくい面があります。また、フランス語・英語では、心理的に自由な意見を言 いやすいですが、チーム内の序列が曖昧なため、命令を出しにくかったり、和を乱す者が現れたりします。
完璧な人がいないのと同様に、完璧な国も無くて、完璧な研究方法もありません。それぞれの文化・考え方には一長一短があり、学ぶべき価値があるモノです。ただ、複数のやり方を学び、自分の 中に複数の引き出しを持っておくことは有用です。博士課程を卒業した後に、職場で起こる様々な障害に立ち向かうために、最適なやり方を自分の選択できるようにするために、違う文化・違う考え方を 学ぶことが必要です。フランス留学には違う文化・違う考え方を学べる利点があります。
0 comments:
コメントを投稿