2008年4月3日

なぜフランスに留学するのか:考え方の差異


Disneyland Paris, France
過去三つのエントリー(拡大するEU編、不足するEU人員編、フランスの教育編)では、客観的なフランス留学の魅力について語ってきましたが、このエントリーでは、少し主観的にフランス留学の魅力を見ていこうと思います。つまり僕の考えるフランス留学の利点です。研究の進め方の差異と、議論における差異について紹介します。フランスと日本の学校に在籍した経験から二つの国の人々の考え方や、研究の進め方に違いがあることが分かってきました。正確に言うと、僕の在籍していた日本の研究室と在籍しているフランスの研究室の違いですが、ある程度の一般化は可能だと考えてます。

ま ず、研究の進め方の差異としては、一言で言うとフランス人は分析・理論重視、日本人は解決策・結果重視の傾向があります。研究にはいろいろな段階があり、 論文を執筆する際にも大まかな流れとして、以下の流れがあります。論文にも表れているように、どんな研究にも必ずある流れです。
  1. 研究背景(Background)
  2. 現状の問題点(Issues)
  3. 問題点の分析/要求事項(Problem statement/Requirements)
  4. 解決策 (Solution)
  5. 設計/実装(Design/Implementation)
  6. シミュレーション/実験評価(Simulation/Evaluation)
  7. 結論(Conclusion)
研究の流れに国別の違いは無いのですが、その比重に偏りがあります。フランスが1〜3重視、日本は4〜6重視と言う感じです。これを表すストーリーをある日の研究室の風景をもとに説明します。
日本:
研究チームリーダー「この問題を解決しなければならない。」
ミーティングで議論.........(略).....
リーダー「よし!この解決策でいこう。明日から実装、1週間後に実験評価だ。」
その後、実装に取り組み、1週間後に実験評価が終わる。
フランス:
研究チームリーダー「この問題に対して、1ヶ月で問題点を分析、次の1ヶ月で要求事項をまとめ、次の1ヶ月で解決策を提案しよう。」
........(略)......3ヶ月がすぎ、素晴らしい分析が出来上がる。
リーダー「よしみんなよくやった。今日はコーヒーを飲んで仕事終わり。明日から実装しよう。」
どちらのやり方にも必ず、良い面と悪い面が存在します。上記の例では、日本は迅速に結果を得ることができます。フランスは素晴らしい分析を手に入れています。しかし両方に短所が存在します。以下に短所を、またまたストーリーにします。
後日.....
日本:「あれ!?よく考えたら、この解決策だとこのケースをカバーしてないね。違う方法でやり直そう」→上記のストーリー冒頭に戻り、ループ。
フランス:「3ヶ月かけた素晴らしい分析と解決策があるから、もうあとは実装するだけ。明日から実装を始めよう」→いつまで経っても、実装と評価ができない。
このように、フランスと日本の考え方・研究の進め方にいろいろな違いがあります。上記の例は極端な例ですが、両国でありがちなストーリーだと感じます。

二つ目の差異は、議論における差異です。どちらの国でも議論は論理的に行うという了解があり、この了解は研究においては普遍的です。一方、議論に使われる言語が、議論に影響を与える場面が見受けられます。日本語で議論する場合は、敬語という上下関係を規定する概念が入ってきます。そのため、反対意見を言う場合には、以下のどちらかになるはずです。「おっしゃりたいことは分かりました。でも私はあたなの意見に賛成できません。」か、「お前の言ってることは間違ってる。俺は反対だ。」みたいになるはずです。論理の土場では対等でも、言語の土場では対等ではありません。フランス語、または英語で議論する場合には、チームメンバーに言語上の上下関係はありません。フランス語では「あなた」はtu、英語ではyouとなり、誰に対しても同じ文句で反対の意見が言えます。

議論を行う言語は、心理的に議論に影響を与えていると思います。日本語では、チーム内で序列が決まっているため、リーダーを頂点としたヒエラルキーとしてプ ロジェクトの協調作業に優位に思います。一方で、自由な立場で反対意見を表明しにくい面があります。また、フランス語・英語では、心理的に自由な意見を言 いやすいですが、チーム内の序列が曖昧なため、命令を出しにくかったり、和を乱す者が現れたりします。

完璧な人がいないのと同様に、完璧な国も無くて、完璧な研究方法もありません。それぞれの文化・考え方には一長一短があり、学ぶべき価値があるモノです。ただ、複数のやり方を学び、自分の 中に複数の引き出しを持っておくことは有用です。博士課程を卒業した後に、職場で起こる様々な障害に立ち向かうために、最適なやり方を自分の選択できるようにするために、違う文化・違う考え方を 学ぶことが必要です。フランス留学には違う文化・違う考え方を学べる利点があります。

0 comments:

コメントを投稿